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■咲咲

【タイトル】 タイトル:ヨアヒムの長い日
【作者】 咲咲

「おぉ〜、これはいい大きさの魚だ」

「先生ー!先生ー!」

時間を見つけてはヨアヒムは病院を抜け出している。
ヨアヒム・ギュンターは准教授であるので
仕事は数多あるのだが、
リットンに仕事を押しつけて釣りをしにきたのである。

「……」

気ままに釣り竿を垂らし楽しむ。
ヨアヒムにとっては心を落ちつけられる
時間であり、娯楽の時間であるのだ。
グノーシスを服用し続けた結果
ヨアヒムは睡眠をとらずによくなった。
研究を続ける時間は楽しいものだが
睡眠はいらなくともやはり休憩の時間
というのが必要なのだ。
それに今日はヨアヒムにも
クロスベルにもきっと長い日になる。

「キーア様……」

キーアはヨアヒムにとっての御子である。
なぜキーアが特務支援課にいたのか
わからないが、迎えにいかねばならない。
そんなことを考えているヨアヒムに
近づく人影が1つ。

「あっ、先生!見つけましたよ!早く戻ってください!」

ヨアヒムを探しにきたセシルは
やっと見つけたとばかりにヨアヒムの腕を引っ張るが
ヨアヒムはまったく動かず釣りのことを考えていた。

「これをエサにすればもっといい物が釣れるかもしれないな」

釣り竿を引き上げヨアヒムはエサをつける。

「ダメですよ!またリットンくんに全部押しつけて……」

「はいはい、わかっているよ」

そういいながらもヨアヒムは釣りを止めない。
なぜなら、釣り竿のエサというのが
グノーシスだからである。
そのグノーシスがいま、魚に喰われた。

「ふふっどのように変化するか、楽しみだ」

ヨアヒムの顔は笑みで歪んでいた。
変化を今度確かめようとヨアヒムは釣り場を後にした。
――クロスベルの長い日のあと、グノーシスを服用した
魚は突然変異で湖の主になったらしい。

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