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■えみり

【タイトル】 続・重剣流特訓法(その3)
【作者】 えみり

 レイスとロッコは何とか4階まで辿り着いた。
 認証端末を操作し、扉を開放して道が開かれる。
 しかしここでも、先に通り抜けたロッコの後ろで扉が
閉まり、レイスが部屋に残されてしまった。

「またかよ…!」

 激しく扉を叩くロッコ。
扉は全く動かない。

「ロッコちゃ〜ん、開かないよ〜」

 レイスは半ば諦め気味だ。

「悪いが、俺は先に行く。
もうそれしかないからな…!」

 ロッコは足を進めることにした。
その先に扉がある。
ここが終点だ。
そこに何かあるかもしれない。
一縷の望みに賭けるしかなかった。

 一方その頃。

「さて、どうするかな…」

 ロッコたちが去ってから、辺りを見渡すディン。
すると突然、目の前に黒い刃が飛んできた。

「ぐあっ!!」

 不意打ちを受けた格好になり、ディンはその刃を
まともに受ける。
飛んできた方向を見ると、もう一方の扉の向こうに、
黒いローブを纏った人間が立っていた。
フードを被っているので顔は見えないが、裾から
僅かに覗く腕や服装を見る限り、男性と思われる。
先ほどの刃は、この男が放ったアーツのようだ。

「てめぇ、誰だ!!」

「…」

 男は言葉を発せず、ひたすら黒い刃を放ち続ける。

「ちくしょう!何がどうなってんだよ!」

 叫びながらアーツを避けていくディン。
何とか一撃を当てようとするが、男は身のこなしが
軽く、攻撃した直後に立ち位置を素早く変えてくる。
スタンロッドが得物のディンは、近付かないと攻撃が
できないが、相手を捉えること自体が難しい。

 時折アーツを受けつつ、自身もアーツで回復をする。
それの繰り返し。
しかし、あまり長くはもたない。

「このままじゃキリがねぇ…どうすればいいんだ…」

 そう呟いたディンの脳裏に、ある言葉がよぎった。

『てめえは、なかなか判断力に長けてるようだ。
だが、いまいち臆病というか…慎重になりすぎる感が
あるな』

 準遊撃士になるための試験で、アガットがディンに
下した評価。

「慎重…そうか…そうだよな…」

 男は再び黒い刃を生み出し、ディンへ放った。
しかし、ディンはそれを避けず、刃へ向かい走り出す。

「うおおお!」

 刃を受け、痛みに全身を襲われても、ひるまず突進する
ディン。

「!?」

 一瞬怯んだ男の懐へ、ようやく飛び込むことができた。

「くらえっ!」

 ディンの一撃が、男の肩口へヒットした。
たまらずその場にうずくまる男。

「よっしゃあ!どんなもんよ!」

 勝ち鬨をあげるディン。
すると、黒衣の男はスッと立ち上がった。

「なかなか強くなりましたね…」

 そういって、男は纏っていた黒衣を取る。
彼の姿を見て、ディンは思わず固まった。

「あっ…!!」

■えみり

【タイトル】 続・重剣流特訓法(その4)
【作者】 えみり

 ディンが黒衣の男の襲撃を受けた少し後。

「ロッコも先に行っちゃったし、ディンは来ねぇし、
どうすっかな〜」

 認証端末のある部屋で足止めを受け、途方に暮れる
レイス。
とりあえず端末を操作してみようと思い、扉の前を
離れた瞬間、レイスは目の前に何かの気配を感じた。

「ん…?」

 よく見ると、視線の先に赤い甲冑を纏った人間が
立っていた。
兜を被っており顔は伺えない。
鎧の形状から推測すると女性と思われるが、手には
騎士剣が握られている。
女は何も言わず剣を振りかぶり、突然レイスへ
襲い掛かった。

「あ、危ねぇな〜!何すんだよ!」

 レイスの制止も聞かず、女は斬撃を繰り返す。
それを必死に避けるレイス。
攻撃を当てようにも、剣とスタンロッドではリーチの
長さが違うため、なかなか近付けない。

「くそっ…これでも食らえっ!」

 レイスは詠唱時間の短いアーツを放った。
3人の中ではアーツも得意な彼であるが、放った
一撃は女にさしたるダメージを与えていない。
どうやら、アーツ耐性の高い甲冑のようだ。

 とにかく相手の体力を削ろうと、ひたすらアーツを
放ち続けるレイス。
だが、さしたる効果はなく、気付けば残り数発しか
打つことができない状況まで追い込まれていた。

 このまま負けるのか。
その時、レイスは以前アガットに言われた言葉を
思い出した。

『てめえはどうやら直感力に優れるようだ。
だが、軽率とも取れる行動が少々目に余るな』

 ディンと同じく、試験にてレイスに下された評価。

「見境いなくアーツを打ちすぎちまった。
これも軽率っていうのかね〜」

 呟くレイス。

「さて、どうするかな〜…
あの鎧にアーツが効かねぇとすると…」

 女が再び、レイスのもとへ向かう。
レイスは距離を取り、再びアーツの準備をした。

「…はっ!」

 アーツを放つレイス。
しかし、それは甲冑姿の女ではなく、女の持つ剣へ
向け放たれたものだった。
アーツが当たり、剣は砕け散った。

「あっ…!」

 思わず声を上げた女の動きが止まる。

「食らいやがれぇっ!」

 瞬間、すかさず懐へ飛び込んだレイス。
スタンロッドが、女の腹部に直撃した。
女はうめき声をあげてその場に崩れ落ちる。

「やったぜぇ〜!」

 喜ぶレイス。
しかし、女はすぐに立ち上がった。

「いたたた…でもいい一撃だったわ!」

 そう言うと、女は兜を脱ぐ。
その素顔を見たレイスは驚くしかなかった。

「えぇっ、なんで…!?」


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