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■レムラー・ヴァッサブロート

【タイトル】 リベール地方のジョーク集
【作者】 レムラー・ヴァッサブロート

1:
 遠方からリベールへ来た旅行者がほうほうの体で居
酒屋へやってきた。
 居酒屋の親父がどうしたのだと問うと、旅行者は「は
じけ飛んだり、口から火を吐くような料理のせいでひ
どい目にあった」と答えた。
 そして「どうしてここには、こんな物騒な料理が多
いのだ?」と問うた。
 それを聞いた親父、
 「そりゃあ、世の中、夫婦喧嘩のタネは尽きません
からな」

2:
遊撃士協会が、この一年間にどのような依頼があっ
たのか調査を行った。
依頼内容別の件数は次の通りであった。
第五位 護衛:95件
第四位 逸失物捜索(人、ペット含む):188件
第三位 物品運搬:257件
第二位 魔獣退治:333件
第一位 夫婦喧嘩の仲裁:9871件

3:
コリンはツァイス中央工房でオーブメント技師にな
るための研修を受けていた。
ある日突然、彼は技師を辞め、ネズミ駆除の会社を
作ると言い出した。
理由を聞かれたコリンはこう答えた。
「猫を集めている軍人を何度も見ているし、こんな
本だって出ているんだ。さぞかしネズミが多くて困っ
ているに違いない」
そう言って、コリンは「猫語日常会話入門」を差し
出した。

4:
「あそこでエルベキツツキが木をつついているよ!」
子供の声に、父親は「そんなわけないだろう」と答
えた。
「だって、あっちにいるよ」
子供が指さした先には、ぺこぺこと頭を下げる青い
上着姿の執事フィリップの姿があった。

5:
デュナン公爵にアリシア女王は「何か必要なものは
ないか」と問うた。
公爵は「一生食うに困らないだけのものが欲しい」
と答えた。
このやり取りを聞いていた女官長のヒルダは、「私
にお任せください」と女王に伝えた。
翌日、公爵のもとに一通の封書が届けられた。
小躍りしながら公爵が封を切ると、中から「エーデ
ル百貨店ドーナツ定期券(終身有効)」と書かれた一
枚の紙が出てきた。

6:
デュナン公爵は、自らに相応しい菓子のコンテスト
を行った。
第三位は、コーンパフをチョコレートでコーディン
グした菓子。
第二位は、シュー皮に砂糖をトッピングした菓子。
そして栄えある第一位には、管状に巻いた生地を輪
にして揚げたドーナツが選ばれ、優勝賞金五万ミラを
獲得した。
帰り際、コンテストに参加した菓子職人たちは感心
した様子で口々にこう語った。
「さすが公爵閣下、ご自身に中身がないことをよく
ご存じだ」

7:
近年、忍耐力に欠ける軍人が増えた、と言われるよ
うになった。
軍の教育部は喧々諤々の議論を行い、理不尽に耐え
るための研修を行うことを決めた。
早速、大陸中を調査し、次の三人の講師候補が決定
した。
・フィリップ・ルナール氏
・ミュラー・ヴァンダール氏
・ギルバート・スタイン氏


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