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■星野ソラ

【タイトル】 恋というもの・最終巻(2)
【作者】 星野ソラ

「そうか…ウィル君の代わりか…」
 アリッサの話を聞いたアントンは
照れくさそうに笑った。
「僕はウィル君みたいに君に
幸せを与えたかな?」
「グスッ……え?」
「どうかな?」
「はい……本当に幸せで…
この一ヶ月がすぐに…過ぎましたもの」
 この答えを言っている彼女の表情が
少し幸せそうな顔をしているのが見えた。
 本当にアントンと一緒にいて
楽しかったみたいだ。
「でも、ウィル君を忘れさせる事は
できなかったようだね」
「…え?」
「だって、忘れたならば彼が
 好きだった武術大会にわざわざ
 足が痛いのに
 行かなくてもよかったじゃないか」
 そうか、アリッサ自身は忘れたいと
思っていたが、本心では
忘れなれなかったのか。
 ん?アントンの右手に持っている
資料はなんだ?
「だから、これ」
 アントンは持っていた資料を
アリッサのベットに置いた。
「ヒック…これは?」
「まあ見たらわかるよ」
 アリッサは資料を手に持ち涙目でも目で読んだ。
ふと彼女の手が止まった。
「え…!?」
「どうかな?」
「これって…本当なの?」
「うん、本当だよ」
 一体どんな資料なんだ?
「アントン、その資料はなんだ?」
「聞いて驚くなよ!」
 早く教えてくれ。
「これはフィル君が生存している
という証明書さ!」
「な!?」
「三日間大変だったんだぞ、クローゼさんや
 いろんな僕の知り合いに情報になるもの
 を集めて、やっと手に入れたんだから」
 こいつ本当にアントンなのか!?
「な…なぜなんですか……?」
「へ?」
「私は…アントンさ…うぅ…
 を私の…グスッ…わがままで…騙したのに…」
 もう彼女は言葉を発するのもきつく見える。
「なんで…ここまで……グスッ…
 してくれるのですか?」
「え?だって偽りだったかも
 しれないけど———」
 アントンは満面の笑みをした。
「僕の彼女だったから!」
 もうアリッサの涙は止まらなくなっていた。

 つづく

■星野ソラ

【タイトル】 恋というもの・最終巻(3)
【作者】 星野ソラ

 あれから数日経った。
 アリッサは退院後、学園に戻り、
 そして、近いうちにフィルがいるという
カルバードの病院にいくそうだ。
 俺達と別れる時の彼女は、
すべてが吹っ切れたような笑顔で帰っていった。
 愛を忘れようとした少女か……。
まったく俺の相棒と真逆だな。
「ごめんなさい」
「オウマイガー!!」

 だが、相棒を見ていると
まったく飽きないんだよな。

「リックス〜、僕は何がいけないんだ!!」
「全部だ、アントン」

 

 

 

 アントンさんとリットンさんへ

 お久しぶりです。
先日はいろいろとご迷惑をかけました。
いまカルバードにいます。
そしてフィルに会いました!
彼はまだ入院生活ですが、
元気そうでよかったです。
彼と再会できたのもお二人のおかげです。
本当にありがとうございます。
そしてお二人に幸せが
訪れるように願っています。

 アリッサより

 

 

 〜END〜


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