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■まくまりー

【タイトル】 赤い石
【作者】 マクマリー・サラウンドウット

 カンッ、カンッ
 
 鈍い金属の音が響く。
 痩せた青年は黒髪を汗で濡らし、
無言で赤い七耀石が光る地面を掘っている。

 「おーい、ディルク、そろそろ飯の時間だぞー。」

 青年より十歳程だろうか、
若い少年がやってきて叫んだ。

 作業を止めないディルクに向かって、
茶色い髪を掻き毟りながら少年はこう言った。
「あー、もう、早くしないと、
また兵士に殴られるよー。」

 「すまない、リヒト。」
ディルクは作業を続けながら、ボソっと答えた。
少年の名前はリヒトと言うらしい。

 すると、リヒトは急に金切り声をあげた。
「おい、ディルク、俺の事は
先輩って呼べって言ったよな?
ここでは、俺の方が先輩なんだからな!」
その声は坑道の中を反射していく。

 「すいません、先輩。」
ディルクは声に負けたのか、そう返事をした。
すぐにリヒトは調子に乗ってこう言った。

「ふん、分かればよろしい、ディルク君。
で、どうして熱心に作業なんかしてんの?
ココに来た理由なんか知っちゃいないけど。」

ココとは、この第七調査場のことだ。
調査場というのは名前だけで、
本質的には帝国の現体制、殆どは
ギリアス・オズボーン宰相に反発する人間を
隔離する、いわゆる政治犯収容所である。

 何故と聞かれてディルクの目は虚ろになった。

——自分は貴族でもないし、
恨みや嫉みがあったわけでもない。
ただなんとなく、
友人と一緒にある集会に参加しただけだった。
なのに、自分だけが捕まって。

 「自分の運の無さにムカついているだけです。」
ディルクはリヒトに少し笑って、
また地面に向かって金属音を鳴らし始めた。
彼はつるはしを振る事で、考える事を止めたかった。

 「ふーん、ま、俺はガキの時から
ココにいるからよくわかんないけどね。
あ、けどディルクほど暗くねーよ。」
リヒトはニヤニヤしながら、
石を拾って坑道の奥に投げた。

 「俺は絶対、ここを抜け出してやるんだ、
これをお金にしてね。」
リヒトはポケットの中から
赤い大きなセピスを丁寧に取り出した。

 「親父は遊撃士様だ、星杯騎士様が
助けてくれるって言ってるけど、
俺は信じないし頼る気なんてない!」
リヒトは少し興奮しながら言った。

 

 セピスをしまおうとしたその時、
背後から大声で叫ぶ声がした。
「小僧!」

 
強靭な肉体の兵士が、リヒトの腕をつかみ
血が止まり真っ青になっている。

「痛い、痛いよー!」
リヒトは必死に抵抗しているが、
兵士はビクともしない。

「帝国の財産を盗み出すなんて、
いい度胸してるじゃないか。
覚悟はできてるんだろうな!」
兵士はナイフを取り出した。

 

「リヒトから手を離せ!」

次の瞬間、ディルクの声と同時に大きな鈍い音がし、
兵士は地面に倒れた。

 つるはしを持っているその手は興奮と、
恐怖で震えあがっている。
「リヒト、大丈夫か?早くここから出よう。
もうココにはいられない。」

 同様に恐怖で声を震わせながらリヒトは言った。
「ば、ばかやろう、
…先輩って呼べって何度も言わせるな…。」

 リヒトは泣き始めた。


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