≪前頁 ・ 第7回展示室へ戻る ・ 次頁≫

■神楽風香

【タイトル】 その光を胸に
【作者】 神楽風香

 初めて出会った時、私はその人に恋をしました。
 でも、その人には太陽のような女の子が、
そばにいたのです。
 そして、
 その輝きは、ずっと逃げ続けていた
私には眩しすぎて……
 到底、敵わないとまで思ったぐらい素敵な女の子
だったのです。
 
 でも……
 最初、その女の子は……その人は私に想いを
寄せていると思っていたそうです。
 少なからず好意を持ち始めていた私は、
そうだったらいいのに
 と、甘い夢を見てしまうところでした。
 
 そう……
 あの時、私は初めてその人の怒りを見ました。
 その怒りが、私に教えてくれたのです。
 大切な人が、誰なのかという事を。
 その人が命をかけて護りたい人は……
 太陽の光を心に持つ、私の大切な大切な
友人だという事を。
 
 再び彼女の元へと戻った貴方に、
私は約束します。
 『故郷』と呼んでくれたこの国を、
これから未来にまで護り続ける事を。
 二度と貴方と同じような過去を他の誰にも
味あわせないために、力を尽くす事を。
 私の心に芽生えた貴方への想いが、
 私の迷いが消えるまで励まし続けてくれた
彼女の心が、
 そして……一緒に戦い、過ごしてきた時間が、
私に力をくれた。
 ありがとう……
 貴方に。
 いいえ、貴方たちに出逢えて本当によかった。

 「長い間、私の我がままを許してくださり、
ありがとうございました」
アリシア女王を目の前にしたクローゼの瞳に、
以前のような弱さはなくなっていた。
それを見たアリシア女王は、来るべき時が来たと
感慨深げにクローゼと話を始めた。

■神楽風香

【タイトル】 も一度、始めよ
【作者】 神楽風香

 「レンちゃ〜〜んっ!」
 エステルとヨシュアと一緒にクロスベルからリベール
へと戻ったレンを出迎えたティータが抱きつく。
 嬉し涙を流すティータに、レンは戸惑った。
 「ど、して……」
 続かない言葉を察したティータは、
レンに向かってニッコリと笑い、こう言った。

 「だって……レンちゃんは、お友達だもん」

 それこそレンにも分からない事だった。
エステルにも言った。
過去を知れば……諦めると思っていたと。
それほどレンの過去は、
他人が受け止められるワケがないほどに重い。
が、それでも家族になろうと言ってくれた。
そして、レンはエステルに捕まる事を選んだ。
でも……ティータは?

 そう思いながらティータを見たレンは、
子猫のように息を呑んだ。
ティータから信じられない言葉を聞いたからだ。
「それにね私、自動人形開発に参加してるんだ」
「っ!! ば、ばかねっ! なんでわざわざ……」
その答えは、すぐにティータの口から聞かされた。
「レンちゃんの事、知りたかったから……」
「そ、そんな事で……」
「うん、そうかもしれない。でも、私はどんな形でも
いいからレンちゃんに関わりたかったんだ」
そう言いながらティータは、レンの身体を抱きしめた。

 「言われたよ?『もう関わるな』って。
それでも私は、レンちゃんと友達でいたいって思った。
誰にどんな事、言われたって構わない。
『レンちゃんは、私のお友達だよ』」
ティータの真っ直ぐな言葉に、
レンの心に初めての感情が生まれる。
それは、『嬉しい』という感情だった。
生まれて初めての透明で透き通った涙が頬を伝う。
「ばかね……ホントに、ばかなんだから」
「うん……バカだよね、ホントに。
でも、レンちゃんに会っちゃったから」

 レンを見つめていたティータは笑っていた。
嬉しそうに涙を流して。
そして、
レンの瞳も嬉しそうに潤みが浮かんでいた。


≪前頁 ・ 第7回展示室へ戻る ・ 次頁≫