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■bouz

【タイトル】 バーテンダー・アガットさん(前篇)
【作者】 bouz

「見てやエステルちゃん!似合う?」

 アルセイユのバーで「どやっ」と決めポーズを
とるケビン。彼の服装はバーテンダー。

「どしたのケビンさん。まさか自前?」
「ロッカーに数着あって気分転換に着たんや」

 シャコシャコとシェイカーを振るケビン。

「ハッハッハ!待ちたまえケビン神父!誰かを
忘れてないかい?」

 高笑いで登場するのはオリビエ。
やはりというべきか彼もバーテンダー衣装。
背後には苦笑しながら、バックライトを当てるヨシュア
と薔薇の花びらを振りまくティータ。

「愛のバーテンダー華麗に登場!」

 自分に酔いながら同じくシェイカーを振るオリビエ。
そこにミュラーが早足でやってきて頭にゲンコツ。

「馬鹿が失礼した」
「ま、待ちたまえこの後———」
「ああ、この後1人で散らかした花回収しろ」

 問答無用にミュラーに襟首を掴まれ退場する
オリビエをいつもの光景と、無言で見送る。

「真のバーテンダーは1人だけってことや」

 ケビン笑ってシェイカーを持つが

「駄目だ。神父さんよ、あんたバーテンの何も
分かっちゃいねえ」

 席で傍観してたアガットがカウンターの中へ入り
慣れた手つきで棚のお酒を調合してシェイカーを振る。

 グラスに注ぐカクテルはルビーの如く透き通った赤。
それを「飲んでみな」とケビンに差し出す。
言われるままに一口含む。ケビンは驚きアガットを
見返す。

「めっちゃ美味い。アガットさんアンタ、本職こっち
かいな」
「んなわけあるか!昔ちょっとな」

 自然なアガットの仕草にへえ、とエステルは
食いつき、ティータはその姿に見惚れてた。

「アガットさんがその服着ればいいみたいですね」

 ヨシュアの言葉に
「馬鹿言うな、俺が似合うわけねえだろ」と否定。

「アガットさん着るべきです!」
「な、なんでお前まで…」

 ティータの断言にアガットはうな垂れる。その様子を
ニヤニヤ笑いケビンは小声で囁く。

「嫁の言葉には従うべきやで?」
「ぶん殴るぞエセ神父!」

「アガットなら皆が満足できるお酒出せそう。
この戦いが無事に終わったらパーティ!
その席でアガットのお酒出すってどう?」

 この戦いが無事に終わったら。
その言葉にアガットは頷く。

「…ああ。分かった。この戦い絶対に勝つぞ」
「うんっ!」

 

 

 そして半月後。無事に事件も終わり、約束の日。
ロレントの酒場アーベントにて。

「アガットさん素敵です!」
「お、おう…サンキュ」

 自分のバーテン衣装に満足そうなティータに
悪い気のしないアガットだった。
渋っておきながら結局着る辺りがアガットの人の良さ。

「…でよ、なんで皆揃わねえ?パーティだろ?」

 エステルに問うが彼女が指差す方。今空いたドアの
向こうにいたのはシェラザードとアイナの姿。

「そ、そういうことかよ…」

 息を飲む。
酒豪たちの存在を知り逃亡多数。

「お、面白ぇ。やってやろうじゃねえか」

 バーテンダー・アガットの戦いが今始まる。

■bouz

【タイトル】 バーテンダー・アガットさん(後篇)
【作者】 bouz

 リベルアークの決戦前に交わした約束から
バーテンダーをやることになったアガット。シェイカー
を振る姿に違和感はなくその動作は自然そのもの。

「赤い情熱。名づけてドラゴンダイブ」

出されたのはルビーのように赤く透き通るカクテルだ。

「お、それってアルセイユの時の?」
「ああ。名前は今つけてみた」

エステルの問いに自信ありげに答えるが…

「あはは、赤い情熱ドラゴンダイブってネーミング
やっぱり貴方すさまじいわ」
「ロリコンダイブでしょ」

「いいから飲めよ!」

 目の前にはアイナとシェラザードの2人。酒モードの
ため性質の悪い絡みも始まっている。
横には既にグロッキーなオリビエとケビンの姿もある。
唯一まともなのはテーブル席のジンとティータ。
ティータは両親が帰国した際に気軽に作ってあげられる
おつまみのレシピをジンに教わってる最中。
カウンターの中にはアガットとエステル。
エステルは手伝い兼ジンのテーブルにお酒とおつまみを
もっていく担当。

これが酒盛りに参加している全員。
危険を感じヨシュアは父と今後の事を話す。と速攻で
他のメンバーをブライト家に連れ避難している最中だ。

「ヨシュア。次は奴の番だ」
「無理無理お酒作れないし」

エステルは笑ってジンにドラゴンダイブを運ぶ。

「味のほうはどうよ」

「確かに凄く美味しいけど」
「こんなんで酔えないわ。もっと度数の強いの出しなさ
い」
「味わいを求めろよ!」

 銀閃から酒豪に二つ名変えろ!と心で叫ぶ。
舌打しつつ、とっておきのカクテルを作ることにする。
ボースのルグラン爺さんを潰した一杯ならば…。

「ほらよ。こいつならどうだ」

 今度は青く透き通る美しいカクテル。

「名前は?」
「ねえよ。度数高いのベースだから満足しろ」
「じゃあ名づけてあげる。ロリ…」
「飲めえ!!」

 そして地獄絵図が始まる。グロッキーなオリビエに
酒を注いだり、ケビンが痙攣を起こしたり、
カクテル用のウォッカを原液のまま飲まれたり
アガットは目の前の惨劇に震え上がる。
エステルは眠ったティータを抱っこして家に送る。
だが彼女は戻らなかった。逃亡なう!
店の酒が尽きたのは夜明け頃。

「飲み足りない」
「遊撃士の受付にレア物あるけど飲む?」
「勿論!」
「アガットさんお疲れ様〜」

酒豪コンビは嵐のように去っていく。
死体と化したオリビエとケビンを放置して。

「終わったのか…」
「お疲れさん。中々味わい深かったぞお前さんの酒。
調合を教えて欲しいくらいだ」
「ジンさんよぉ、あんたがいてくれて良かった」

唯一まともな感想を述べてくれるジンが最後まで
いたのが唯一の救いだった。

ただ巻き込まれないように
アガットを助けずに距離を置き続けていたのだが。

「あいつらは…人間じゃねえ」

薄れゆく意識の中そう思った。

その後、これがトラウマになりアガットがシェイカーを
振る姿を見た者はいなかったという。

-FIN-


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