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■おっとー・ばいやーばるつ

【タイトル】 巨神の目覚め
【作者】 おっとー・ばいやーばるつ

「ぶはっくしょん!!」
 準遊撃士のビザンテイラは、盛大にクシャミをしてか
ら慌てて口を押さえて周囲を見回し、「相手」に気付かれ
ていないか確かめた。その様子を、相棒のカイニーは呆
れ顔と諦めの感情を織り交ぜた複雑な表情を浮かべつつ、
口元に指を立てて「静かにして」と合図を送る。いつも
の事だが、彼女の迂闊さには何年経っても慣れなかった。
 幸いな事に、「相手」は気付かなかったようで、目の前
の作業に没頭していた。あるいは、気付かないふりをし
ているだけかもしれないが。
 二人が居るのは、カルバード共和国のアルタイル市か
ら、北に4日ほど歩いた場所にある古代ゼムリア文明の
遺跡である。
 遺跡は共和国軍によって一般人の立ち入りが禁止され
ているが、侵入者が後を絶たない為に遊撃士による定期
パトロールが行われていた。
 今回、ビザンテイラとカイニーが受けた依頼も遺跡の
定期パトロールであり、それ程、難しい依頼ではなかっ
た。
 3日目の早朝、何者かが遺跡に侵入した形跡をカイニー
が発見する。
二人は遺跡に駐屯している共和国軍に通報すると共に、
侵入者の追跡を開始した。可能なら、自分達の手で捕ま
えたい所であった。
ところが、侵入者は遺跡の奥まで入り込んでおり、魔
獣や人形兵器を倒しながらの追跡は困難を極め、侵入者
を発見した時はEPが底を付きかけている有様だった。
「まずったわね、このザマでは侵入者を捕まえるのは無
理ね。」
「万全の態勢でも、難しいと思うわ。中央にいる女は、
例の"執行者"のようだし。」
「"身喰らう蛇"か・・・。」
 昨年、リベール王国を襲撃した"結社"の脅威と、"執
行者"の恐るべき戦闘力は準遊撃士であっても周知して
いた。
「それにしても、奴ら、何をしているのかしら?」
「あの石像を調査しているみたいだけど・・・・」
 "結社"の一行がいる場所は天井が開けた広場になっ
ており、そこには4体の石像が立っていた。
 その中の1体に、持ち込んだ機械から伸ばしたコード
の先端を取り付けていた。
 作業員が機械の操作を行うと、石像の両眼が光り、腹
部が左右に開いて、中から椅子がせり出してきた。
「あの石像・・・!」
「まさか、アーティファクト!?」
 驚く二人をよそに、"執行者"の女性は椅子に座って石
像に乗り込んだ。彼女が内部に収容されると、石像の目
が再び光り、足を一歩踏み出した。地響きと共に石像の
表面が剥がれ落ち、中から金属質のボディが現れる。
そして、背中の翼状の機関を作動させると、凄まじい
速度で空中に舞い上がっていった。


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