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■凛

【タイトル】 闇の戦闘
【作者】

人間の姿をした魔獣が、人々を襲う事件が発生した。
その魔獣が持っているのは、導力銃やライフル、
そして小型の導力砲といった、遠距離なものばかり。
1人の人間が全てを動かしている情報を受け、
これ以上放っておいては犠牲者が出てしまうと、
クロスベル警察のクラス1stにして優秀コンビ、
ロイドとランディが立ち上がった。

 

背後から魔獣が追いかけてくる。
人間のスピードではとても逃げ切れない。
そう判断したロイドは獲物を取り出し、
立ち止まって正面を向いた。

「おい、バカ!
無茶なことはやめろ!」

ランディは必死に叫ぶ。
しかしロイドは、今の状況を考えて、
逃げるより闘うことを選んだ。

「おやおや、キミの性格にしては
珍しく無謀なことだな」

この魔獣たちを率いる人間が近付く。
自分を魔獣使いとも言っていた。
何の関係もない人々を巻き込み傷付けて、
各国を渡って逃げ回っていた、
そう、憎き犯人。

「立ち止まったが最後、ここで終わりだな」

そう言って指を鳴らし合図をすれば、
魔獣たちは一斉にロイドに襲い掛かった。

「くっ……!」

何とか防御をして急所は逃れたが、
無差別に攻撃を受け、体ごと壁に叩き付けられる。

「ロイド!」

相当のダメージを受けたのだろう。
ロイドは壁に凭れた状態でピクリとも動かない。

魔獣が、ロイドに銃先を向ける。
同時に魔獣使いの人間も、ロイドに近寄る。
今ランディがいる場所との距離は離れており、
とても走ってでは間に合わない。

非常にまずい、そう感じたランディは、
自分の獲物であるスタンハルバードを投げる。

本当は人間を狙ったつもりが、サッとかわされ、
代わりに武器を持った魔獣に直撃し、崩れた。

ランディの目の前に、その武器が落ちる。

「自分の獲物を投げるとは、
負けを認めたようなものだな。
警察で優秀なコンビもこれで終わりだ」

指を鳴らそうと、腕を上げた瞬間。

「——動くな!」

叫び声の主は、導力ライフルを構えた、
ランディの姿だった。

「そんなもので脅しと思うな。
使い方を知らないで何が出来る?」

「……悪いな…、
何も出来ないと思ったら大間違いだ」

体が、動く。
自分の思うように。

「俺の相棒を傷付けた罪だ。
悪いが一発で終わらせる——!」

頭に響く、かつての感覚。

ランディは魔獣に向かって猛スピードで走る。
銃弾をかわしていたが、ある一発が結った髪を掠めた。
紐が切れ、はらりと赤い髪が長さを現す。

「…お前は——!」

 

犯人が、何かに気付いた。
この人間を知っている、そういう表情のように——

■凛

【タイトル】 赤い記憶
【作者】

「ほら、新しい玩具だ」

遊んでいたものを取り上げられ、
冷たい刃先が向けられた。

「使い方を一度で覚えろ。
手間のかかることはするな」

カシャン、と。
目の前にナイフが投げ捨てられる。

「これが、お前の道だ。ランドルフ」

待っているのは、闇に覆われた絶望。
これが、最初に武器を握った
まだ4歳の頃だった———

「っ………」

誤って、ナイフで指を切れば、
一言では済まない怒鳴りが飛んでくる。

切った場所は、指や腕だけでない。
腹や脚にも、数え切れない程傷を作った。

失敗をしては、いけない。

 

大陸西部最強の猟兵団≪赤い星座≫
その団長の息子であることから、
常に戦闘面技術を仕込まれてきた。

ナイフの使い方を完璧に覚え、
これまで優秀な成績を見せてきた。
もちろん、時間と体力を考えて、
いかに短時間で、人を傷付けられるか。

幼いのに覚えるスピードは凄まじく、
当時からランドルフは、天才であった。

これまで何人を傷付けてきたか分からない。
子供だと油断した大人が次々に倒れていく。
こんなに遊びが楽しいと思ったことはない。

年は経ち、再び新しいことを覚える時がきた。

「ランドルフ。
お前にはこれからを背負わせる」

渡されたのは、持つことだけでも困難な重さ。
丁寧に磨かれた、導力ライフルだった。

もちろん、意味は分かっていた。
厳しい条件をどう闘い、どう生きるか。
9歳にして、大部隊を率いる実戦。
『これから』という言葉に、未来は無かった——

 

「ランドルフ様!
東から敵部隊が攻めてきます!」

火の粉が舞う。
視界が悪く、前に進むことが難しい。
焼けて樹も無ければ、隠す盾も壁も無く。
圧倒的に敵側が有利となっていた。

部隊員たちは一斉に指示を待つ体勢に入る。
幾度となく悪い条件を潜ってきたランドルフは、
そんな状況を笑って楽しんでいた。

「正面から突っ込んで来るなんて、頭悪いよね」

小さい体が立ち上がる。

「問題無く奇襲が出来る。
俺に、間違いは無い」

脇に抱えていた導力ライフルを構え、
部隊員たちの先頭に立った。

 

導力ライフルより小さい体のランドルフ。
敵部隊が、その姿を目にした瞬間、
生き残った者は、誰ひとりいなかった——


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