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■りず。

【タイトル】 へいへいぼんぼん。
【作者】 りず。

 青い空が澄み渡るそこはのどかな街道沿いだった。
 大きな池の傍。僕のお気に入りの場所。
 道に沿って等間隔に置かれたオーブメント灯も見逃せ
ないポイント。
 壊れた時を見計らっては中のセピスをこっそり拝借し
ておく。
 セピスの使い方なんて知らないけど、持ってると何と
なく幸せな気分になれた。
 僕の自慢のコレクションだった。

 その日も僕達は街道へ出かけた。
(今日も天気が良いなぁ。)
(こんなに気持ち良く散歩が出来るのも女神様のお導
きかな♪)

 なんて悠長に走り回っていたその時だった。

 気付いた時には遅かった。
突如背後から跳んで来た2つの影。
素早く打ち込まれる多段攻撃。
仲間が、目の前で、倒され消えていた。
一瞬だった。
何故…どうして?!
僕は逃げた。
全力で走った。
止まったら、僕も殺られる!!

 どの位走っただろう。
微かに鼻をつくような匂いが感じられる。
馴染みの無い匂い。
随分遠くまで来てしまったようだった。
そっと気配を確認する。
辺りに殺気は…感じられない。

 仲間と相談して、新たにこの辺りを住処にする事に
なった。
お気に入りの場所を離れるのはとても辛かった。
誰が一番早く池を一周できるか、競争した事もあっ
たっけ。
ああ、大事なコレクションも置いてきちゃった。持っ
て逃げる余裕なんて無かったよ。

 でも、新たな地で過ごすのもきっと悪くない。
だって僕はひとりじゃない。
窮地の中、共に逃げてきた仲間達が、傍で笑っていて
くれたから。

 

 新しい住処に移ってきてから暫く経った。
仲間の数も増えて、住処も大分賑やかになった。
お気に入りの場所も見つけた。
近くにそびえる真っ赤な塔を眺められる小高い丘は今
までに無かった光景を楽しめた。
この辺りは白くて小さな花が咲いてるんだ。
花は可愛いし、格好の隠れ家にもなる。
そして、近くに池もあった。
小振りの池だけど、底が深めで、色々な魚も住んでる
みたい。
住み心地は悪くない。
寧ろ、前よりも良い位かもしれない。

 でも、その平和も長くは続かなかった。

 出かけた仲間が帰ってこない、という事が何度か続き、
どうやら街道沿いは『危ない』らしい、と小耳に挟んだ
矢先の出来事だった。
僕はコレクションの充実を図るべく、気心知れた仲間
を連れて街道まで足を運んでいた。
その日は収穫が多かった。
新たに増えたコレクションに心躍らせ、浮ついた気持
ちで歩いていた。

 背後から躍り出る4つの影。
声をあげる間も無く
燃える様な赤髪の男が放った爆炎が僕達を捉えて

 だ…れか、たす…け…

 周囲にはもう、僕しか残っていなかった。
溌剌とした少女の声があがると、
すかさず目の前の黒髪の少年が構えを取った。
僕に凍えるような視線を向ける。
そのまま、高く跳んで…

 薄れ行く意識の中、 
話し声が聞こえた、気が、する…けど
何を言っているのか…僕には理解でき…な、っ…

 …………

 

「よーし上出来♪さてと運動の後はやっぱ温泉よね!」
「はいはい。でも、これで78回目の温泉だよ。
そろそろ先に進もう?」


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