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■星野ソラ

【タイトル】 恋というもの・三巻(3)
【作者】 星野ソラ

 王都の空は最悪で、冷たい雨を降らしていた。
 俺は雨の中、アントンを探した。
 どこにもいない…くそ、どこに行ったんだ!
 そして数分後。
 ショッピングモールの休憩所で
雨に打たれている相棒の後姿があった。
「…見つけた」
「………」
 俺は階段を下りた、
アントンの背中は今さっきより
大きくなったが、それでも小さく感じた。
「……リックス…やっぱり僕って
 バカなんだね」
「…アントン」
 雨の音でアントンの言葉が
少し掻き消えていた。
いや元からだったかもしれない。
「…なんで僕って…
 こんなに乗せられるんだろうかな…」
 アントンがこちらに振り向いた。
アントンの顔は笑いながら泣いていた。
 彼女がなぜアントンと付き合い
近づいたのは———

トラウマとなってしまった彼氏
ウィルを忘れたかったからだ。

「僕は本当に駄目なんだよ…」
真実に気が付いたアントンは
「彼女は最初から……
僕を傷薬としか思っていなかったんだよ…」
完全に傷つき、殻に篭ってしまった。
「…どうせ僕なんて…
ただのもてない男さ……」
誰から見てもかわいそうだと思うだろう、
「もう…いやだよリックス…もう」
だけど俺は、
「…すべてが嫌になってしまうよ…」

 そんな感想で終わらせない!!

「アントン!!しっかりしろ!」
「…へ?」

 こいつはいつも、

「本当に彼女がお前をだましたと
思っているのか!」

 彼女が欲しさで走り回って、

「だって…今さっきの話…」

 時には壮大なバカもやる。

「なら!最初に会ったときの!
お前へのあの子の輝きは本当に嘘に見えたか!」

 このリベールで…

「思い出話で笑っていた
あの子の笑顔は嘘だったのか!!」

 果てには外国で、

「会場でお前のくれたジュース缶をもらって
うれしそうに飲んでいたのも嘘なのか!」

 本当に俺はこんな奴についていったものだ。

「すべて!すべてが嘘なのか!?」
「そ……それは」

 だが、こいつは

「どうなんだ!!」
「………」

 不器用な優しさが溢れている。

「…ち……う」
「ん?なんていったんだ」

 こいつは外では現しきれないんだ、

「ちがう!!」
「!」

 体が嘘だと思っても

「彼女は嘘をついていなかった!」

 本当は心の中では信じている。

「短い期間だったけど、
僕は彼女が嘘を言っているように
見えなかった!!」

 だから俺は、

「表面上では嘘でも
ぼ、僕は…彼女の気持ちを」

 今まで一緒に旅をしてきたんだな。

「信じている!!」

 つづく

■星野ソラ

【タイトル】 恋というもの・最終巻(1)
【作者】 星野ソラ

 あれから3日後、アリッサは意識を取り戻し、
体調も回復していた。
 いま俺は病室にいるのだが、
俺の目からもアリッサの血行が
よくなっているのが見れる。
「あの……アントンさんは?」
「わからん……」
 あの日以来、アントンは突然姿を消した。
 俺にも連絡を出さないで
なにやっているんだ?
「そうですか……」
 彼女の表情が悲しんでいるのが見える、
たぶんアントンが本当のことに
知ったかもしれないと、
気が付いているかもしれない。
 そんな事を思っていると扉からノックが聞こえた。
「僕だよ」
 三日ぶりの相棒の声に俺は少し驚いた。
「ああ、入っていいぞ」
 部屋にアントンが入っていき、彼女の元に行った。
「………」
「………」
 見つめあう二人、
これでアリッサは疑惑から確信に変わった。
「わかったんですね……本当のことが…」
「…うん」
 アリッサの瞳が涙であふれていた。
「ごめんなさい……どうしても…どうしても…
 ウィルのことを忘れる事ができなかったのです」
 そのうち、アリッサが毛布を強く握りだした。
「だから…私は…グスッ…また恋をすれば、
 ウィルを……心の痛みを忘れられると思ったんです」
「……うん」
「だから私は…グスッ…声を…うぅ…
 かけてもらったアントンさん…グスッ…なら
忘れられると思ったんです」
 もうアリッサの涙は抑えきれず、
ぼたぼたと落ち始めた。

 つづく


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