≪前頁 ・ 第7回展示室へ戻る ・ 次頁≫

■れむなんと@あしゅら

【タイトル】 銀の夢
【作者】 れむなんと@あしゅら

 七曜歴1205年 レミフェリア クロスベルの境界…
ヒュウ〜と風を切る音が聞こえている。        

「ふぅーっ…今回も疲れたなぁ…」
俺はレミフェリア公国の遊撃士グラッド。昨日まではク
ロスベルで依頼を受けていたが今日、帰国できるようになっ
た。今は飛行船でレミフェリアへと向かっている…

「久しぶりのレミフェリアはどうなっているかなぁ…」

キンコーン、スピーカーからいつもよく聞きなれた音が
聞こえてくる。

「間もなくレミフェリア公国首都…?なんですか?ここ
は一般の方は立ち入り禁止ですが…きゃあああああ!」

「!なんだ!?一体何が起きた!?」

 剣の柄に手をかけ、船内に入ろうと扉を開けた瞬間。

「————!?————」

 カキィン!
咄嗟に出した剣と中から出てきた何者かの剣がぶつかり
甲高い音を上げる。

「誰だっ!!」

「フッ…名乗るほどの者じゃない…ただ少しお前に用が
あるだけだ…二つ聞かせてもらおう…」

「何だ!」

 何者かは仮面をつけて顔は分らないにせよ、体格と声
から男だとは分った。長い銀髪と手の金色の大剣が特徴
的だ。

「お前はクロスベルで、古い鍵を見つけなかったか…?
それと、黒髪で琥珀色の眼をした男を見なかったか…?」

「…古い鍵…か…これのことか?」

 俺はエニグマに付けている錆びた鍵のアクセサリーを
見せる。
この鍵はとある依頼をこなした時、依頼者がくれたも
ので、それ以来お守りとして使っている。

「…!そうだ…それだ…して、もうひとつの方は…?」

「黒髪の男のことか?」

「そうだ…」

「ヨシュアっていう奴ならお前の言ったやつとほぼ同じ
だな…黒髪で琥珀色の瞳をしている…少し前までクロス
ベルにいた。今はリベールに行ったはずだ。」

「そうか…分った。情報提供感謝しよう。…そしてその
鍵をよこしてもらおうか…我々に必要なものでね…」

「何…?…無理だ。これは大事なものでね。」

「手荒なまねはしたくないが、交渉が決裂したならば仕
方がない。」

「受けてみよ…荒ぶる炎の一撃を…鬼炎斬!!」

 ガキィイン!! ドスッ!!
俺の剣は途中から真っ二つに折れていた。

「今の攻撃すら防げぬようなら鍵を渡してもらおう…」

「まだだ…まだ…終わっちゃいねぇ…」

「その折れた鉄塊にまだ縋るか…あの時の遊撃士と同じ
ことをよくする…」

「喰らえ!!」

 全身全霊を込めてはなった一撃は、男の胸を貫いて
いた…。

「やったのか…?」

 全身が脱力して座り込んだ時、
パチパチパチパチ

「!?」

 開いていたドアから俺が倒した男とまったく同じ男が
現れた。

「まぁ分け身にせよ、倒したことに変わりはあるまい。
…よかろう、ここは引いてやる。だが俺はお前がその鍵
を渡すまで、完全に引きはしないからな…」

男は飛行船の手すりに近づく。

「待て!!」

「?…なんだ?」

「名前は…?」

 男は少し考えると、飛行船は雲の中に入り、声だけが聞こえた。

「ロランス…とでも名乗っておこう…」

 雲が消えた時、男はすでにいなかった

≪前頁 ・ 第7回展示室へ戻る ・ 次頁≫