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■風祭

【タイトル】 特務支援課の七夕
【作者】 風祭

「はい。良かったらティオちゃんもどうぞ」

 エリィさんはそう言うと、
1枚の細長い紙切れを私に手渡した。

「何ですか、これ?」

「この短冊にお願い事を書いて、
吊るしておくとそのお願いが叶うんですって」

「…………はぁ……何かの御呪いですか?」

「ティオちゃんは『七夕』って知ってる?」

「……タナバタ? 
すみません。聞いた事無いです……」

 そう答えると、今度はロイドさんが話を続けた。

「昔、兄貴から聞いた事があるんだ。
カルバード共和国に伝わる神事の一種らしい」

「へぇ……
でも、何で七夕なんてやる事にしたんですか?」

「キーアに七夕の事を話したら、
やりたいやりたいってせがまれてさ」

 キーアに目を向けると、
ツァイトと一緒に葉竹や署内の壁に
折り紙で作ったと思われる星等の
飾り付けをしていた。
とても楽しそうに作業を続けている。
高い所への飾り付けはツァイトの背中に
乗ってなんとかこなしているようだった。

「成程……貴方らしいですね」

 まあ、キーアに頼まれれば
私も嫌とは言えないですが。

「ロイドさんは何をお願いするんですか?」

「ああ、俺は——」

 ロイドさんが私の質問に答えようとしたその時

「俺はもちろん、セシルさんとの
結婚をお願いするぜ!!」

 と、ロイドさんの言葉を遮って、
ランディさんが叫んだ。

「ランディさんは少し黙ってて下さい」

「なんだよ〜。冷たいなティオすけは……」

「ははは……」

 全くこの人は……。

「エリィさんも
もうお願い事は決まっているんですか?」

「え? 私? わたしは……
えっと…………その……ロイ……」

 エリィさんは何故か顔を赤らめて
言い淀んでしまった。

「エリィさん? どうかしましたか?」

「あ……あ! 
私キーアちゃんの手伝いをしてあげないと! 
また後でね。ティオちゃん」

 エリィさんはそう言い残して、
足早にキーアの方へ立ち去って行ってしまった。
……一体どうしたのだろう?

「ティオは何か考えてるのか? 願い事」

「う〜ん…………あ、そうだ!
『純金のみっしぃが欲しい』とかどうでしょう?
あと、『ワンダーランドの年間パスポートが欲しい』
なんてのもいいかもしれません。
みっしぃのイベントが何時あっても
駆けつけることが出来ます!」

「純金のみっしぃ……凄いなそれは。
おっと、もうこんな時間か。
俺はそろそろ仕事に戻らないと。また後でな」

「あ、はい。いってらっしゃい」

 ……そういえば、
ロイドさんの願いって何だったのだろうか?
結局、訊きそびれてしまった。

 ——その夜、署内はお飾りと
短冊の吊るされた葉竹で一杯になった。
その中に『来週晴れますように』
とだけ書かれた短冊があった。
最初は誰が何故こんな事を
お願いしたのか判らなかったが、カレンダーを見て
その人物も理由も直ぐに判明した。
来週は支援課のみんなで
ワンダーランドに行く "約束" をした日なのだ。

 ……ちなみに、
私は純金のみっしぃをお願いしてみる事にした。


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