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■ヒノっち

【タイトル】 月末の金曜の魔物?退治
【作者】 ヒノっち

 「ふふ、うふふふ」
 「えーとエリカさん?」
 「な〜に?」
 顔は笑ってるが声が殺気に溢れている。
 「そんなもの設置してどうするんじゃ?」
 「決まってるじゃない!月末の金曜の魔物退治よ!」
 「魔物?」
 「アガットの事かの?」
 「それ以外に何が…」
 突然ヴーヴーと警報が鳴りだした。
『赤毛の男が拠点に接近中。防衛ラインまで残り26秒』
 
 「この寒気は…何だ?」
 その魔物アガット・クロスナーは飛行艇の中で身の危
険を感じ取っていた。

 「ほう。自動認識システムか」 
「まだ粗削りな性能だけどね。なかなか便利だわ」
「やれやれ」
「あの」
その時ダンが会話に割り込んだ。
「ん?どうしたの?」
「飛行艇が着くまで10分近くあるんですけど」
その時嫌な予感がした。

 同時刻ティータは買い物を終えて家に向かっていた。
(えへへアガットさんが来るからって買いすぎちゃった
。何時に来るのかなあ)
と幸せ妄想真っ最中のティータが敷地に入った。
『赤毛の男』
「ふえ!?」
『赤い頭、赤い頭。アガット・クロスナーと断定。排
除行動に入ります』
「…排除!?」
するとミサイルが飛んできた。

 「なんでよ!?あの子は赤毛じゃないのに!」
「ティータの帽子が赤だからでは?」
「なるほどのお」
「感心してる場合!?ゴラァ!私のティータに何して
くれてんのよ!」
ガン!ボン!プシュ〜。
「……」
「…エリカや」
「出て助けましょう」
ドアに手を掛ける。開かない。
「……」
「とにかく通信するわ!」

『ティータ!』
「お母さん!」
『ティータごめんね。魔物退治システムが今誤作動し
てるのよ』
「なら早く止めてよお母さん」
『こっちからじゃ無理なのよ』
「ええ!?」
『ドアノブに解除ボタンがあるの。それを押して』
「そっそんなのむ」
その時上からミサイルが飛んできている事に気付かな
かった。
(あ!?)
よけられない、そう思った時後ろから誰かに抱かれて
ティータはミサイルを避けた。
「ふえ!?」
「おいおい何だこれは!」
「アガットさん!?」
「久々の挨拶は後にするぞ。あれはどうしたら止まる
?」
「えとえとお母さんがドアノブのボタンを押せば止ま
るって」
「…なるほどな」
するとアガットはこぶし大の大きさの石を拾い上げ雄
叫びと共に思い切りドアに投げつけた。

 「いやあアガット君お見事だったよ」
投げた石は見事ドアノブに命中し騒ぎは収まった。
「たく、飛行艇が早めに着いてギルドに依頼が来てな
かったらアウトだったぞ」
「まったく今回は肝を冷やしたわい」
「ホント。あと少し遅かったらオーバルギアまで出て
くるところだったわ」
「……」
「あはは…」
「ごめんねティータ。お風呂入って綺麗にしてらっし
ゃい」
「うん、そうする」
「オレも借りていいか?」
「なっ!?一緒に入る気!?」
「んな訳あるか!」
こうして退治は失敗に終わった。

■ヒノっち

【タイトル】 渾名と決意
【作者】 ヒノっち

 「うーん」
 その時騎士団第5位『外法狩り』の渾名をもつ守護騎
士ケビン・グラハムは真剣に悩んでいた。
 「恥かきたくなければ…か」
 「どうしたのケビン?」
 その時ケビンの従騎士であるリースがホットドックを
かじりながら声を掛けてきた。
 「お前またくっとんかい・・・」
 「お腹が減るのは自然の摂理」
 「…そうでっか」
 そう言ってケビンはまた何か考え出し始める。
 『リースと相談して決めるといい』
 不意にセルナード教官の言葉が頭をよぎった。
 「なあリース」
 「ふぁに?」
 「なんやこう…俺にピッタリな渾名ないか?」
 「もう持ってる」
 「いやそうやけどな、変えようと思ってんねん」
 「変える?」
 リースは最後の一口を名残惜しそうに口に入れた。
 「ふぁんでふぁた?」
 「いや…姉さんの目指した場所に行くって決めたのに
外法狩りはあんまりやろ」
 「…そっか。でもケビン、それは自分で決めるものじ
ゃないの?」
 「いやそうなんやけどな。教官がリースに相談せえっ
てな」
 「私に?」
 「オレの自信のあった渾名を聞いて大笑いされたんや

 「どんなの?」
 「蒼き流星、そしてブラックアローや。めっちゃいか
すやろ?」
 無言。
 「あれ…そんなにおかしいか!?」
 「ううん」
 「おいおい何か気になるやないか…」
 「別に…ありのままのケビンとこんな話したの久しぶ
りだと思っただけ」
 「え!?…はは、そうかもな」
 言われてみればこうして普通にリースと話すの
は久しぶりな気がする。いや
 (リースに限っての事やない…か)
 ルフィナ姉さんを殺めたあの日からずっとか。
 (影の国の一件が無かったら…俺はずっと空っぽやっ
たんやろうな)
 聖痕の今頃になっての罪滅ぼし…はちょっとロマンチ
ック過ぎるか。
 「リース…ありがとうな」
 「?」
 「オレが戻れたのも、お前のおかげや」
 しかしリースは少し間をおいてその言葉に首を横に振
った。
 「私のおかげじゃないよケビン」
 「え?」
 「私は手伝っただけ。本当にお礼を言わなきゃいけな
い人は…姉様だよ」
 「!?」
 「だからケビン」
 そういうとリースは方石を取り出してケビンに渡した

 「エリカさんに渡すんだし、姉様に」
 「ああ…そうやな。ははホンマにそうやな」
 誰よりも優しくて厳しかった姉さん。オレの憧れでホ
ントの母親以上に愛情をオレにくれた人。そしてオレを
闇から2度も救い出してくれた人。
 「ホンマに…ありがとう……姉さん」
 ケビンは方石を両手で持って静かに黙祷した。
 「……」
 「ケビン」
 「大丈夫や。あそこでの決意は変わらんから」
 「そう」
 そう言って方石をリースに渡した。
 「それはそうと何か渾名考えてくれたか?」
 「そうね。ケビンの渾名…」
 そう言ってリースはじっとケビンを見る。
 「……グリーンカレー」
 「…お前まだ腹減ってんのかい」
 二人は進んでいく。いつかその人が夢見た場所に辿り
着けると信じて。


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