≪前頁 ・ 第7回展示室へ戻る ・ 次頁≫

■ディーノ・アルジェント

【タイトル】 金色の剣士
【作者】 ディーノ・アルジェント

 「はぁ、やっぱり遊撃士さんにでも、
お願いするべきだったかしら。」
 深い森の中を歩きながら、
私はそっとつぶやいた。

 私はレミフェリア公国にある
オーブメント工房の技師のラーメ。

 オーブメントの発展に伴い、
オーブメント技師の需要は増えていったけど、
まだまだ本格的な技師は少なくて、
私もオーブメントとクォーツの調整で、
毎日忙しい日々を送っていました。

 そんな忙しい中、森の中のオーブメントの外灯が、
故障したという話を聞いたのは、昨日の事でした。

 いつもだったら、遊撃士さんにお願いして、
護衛をお願いするんだけど…

 今回は遊撃士さんが全員出払っていたのと、
私の故郷の町の近くの森だし、
急いで直さないと町のみんなが困るから、
工房長に言って、私が一人で行く事になったの。

 「あれが故障した外灯ね。」
私は目的の外灯を見つけ、すぐに準備を始めたの。

 「これは…」
外灯の壊れた原因を調べていると、
普通の壊れ方じゃなくて、
『何か』の爪によって、
導力線が切断された感じだったの。

 そこで私は昨晩
故郷の町で聞いた話を思い出しました。

 『最近、この町の近くも物騒でね。
何かの遠吠え見たいのが聞こえたりするんだよ。』

 そう言っていたのは、
昔から子供たちに『夜になると魔獣に襲われるよ!』
なんて脅かしていたお婆ちゃんだったから、
てっきりまた脅かされているだけかと思ったんだけど…

 急に私は怖くなって、今まで明るく感じていた森も、
薄暗くなったように思えて、
一刻も早くその場を離れたくなりました。

 作業自体は順調で、始めてから1時間もしないで、
無事に修理は終わりました。

 「ふぅ、何も怖がることはなかったじゃないの。」
私は自分に対して、怖がっていた事を誤魔化すように、
笑おうとした時、不意にその音は聞こえました。

 『グォォォォォォォォォ…』

 それは今まで私が聞いた事のない音で、
魔獣の唸り声というのがあれば、
きっとこういう音なんだと思いました。

 私は急いで帰ろうと思って、
荷物を背負って立ち上がり、
帰りの道の方を振り向いた時、
それは私の方へゆっくりと歩いてきていました。

 『グォォォォォォォォォ…』

 私の前にいる魔獣が、
先ほど聞こえた音と同じ音を発しながら、
ゆっくりと近づいて来て、私は動けなくなって、
その場に座り込んでしまいました。

 座り込むと同時に魔獣は走り出し、
飛び跳ねて私の方へ飛び掛ってきました…

 「キャーーーーーーーーーーッ」

 私は目も瞑り叫んだのですが、いつまでたっても、
魔獣が私へ攻撃してくる事はなかったのです…

 ゆっくりと目を開いてみると、
目の前に男性が剣を持って、
魔獣と相対していたのです。

 その男性はとても綺麗な、
金色の髪をしていました。


≪前頁 ・ 第7回展示室へ戻る ・ 次頁≫