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昔。 黒き衣の乙女があった。
乙女は心の力もて、荒ぶる炎の魔神を封じた。
その封印は、三百年の後に解かれることが定められた。
黒き衣の乙女は、生涯を祈りに捧げ、尼僧院を建立した。
炎の魔神は許しの時を待っている。
【全五回】
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「…あれが、銀の公爵ね」
紫のドレスに身を包んだ女が、猫に話しかけた。
「正しくは、銀の公爵の子孫、よ。
同じあだ名で呼ばれてるけど」
猫は無邪気な声で答えた。
【全八回】
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ネイティアル。
それは、異世界から呼び出される様々な精霊たち。
この世界には、ネイティアルを自在に操り、戦いを繰り広げる者たちがいる。
彼らは、ネイティアル・マスター。
様々な目的と様々な思いを抱く術師たち。
【全二回】
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そうよ、あたしったら、本当は優秀な魔女なんだから。
こんなところで、ホコリだらけのお屋敷の掃除なんて、しなくったっていいはずだわ。
おっしょうさまったら、あたしの才能が、全然、わかってない。
まだ14歳だからってバカにしちゃいけないわ。
なんたって、グリオンが出せるのよ!
【全三回】
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「あたしは闇の刺客だよ!
あたしを殺らなきゃ、あんたが殺られるんだよ!
裏切り者は殺される掟なんだ!
だから、あんたを殺さなくっちゃならないんだよ!
親方様の、お言いつけなんだから…」
【全七回】
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気がつくと、私は砂漠をさまよっていた。
誰かに姿を見られたら、気のふれたかわいそうな女だと思われるに違いない。
なんの装備もせず、ただ紫の衣だけをまとって、裸足で砂を踏みしめる。
足元の砂は地平線へ連なり、そこから先は夜空に昇って光り出す。
世界の全てが、星と砂で出来ているように思えた。
私は、どこへ行くのだろう?
【全十八回】
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私はネイティアル。
まだ形を持たない。
私を呼び出し、望みを抱く者の心の力によって、初めて姿を与えられる。
私は力。
作用する力、それ自体。
人間から姿を与えられることによって、実世界に存在することができる。
私は、強大な無限のエネルギー…
【読みきり】
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ジェア王は陶片を床に落とし、踏みつけた。
テラコッタのかけらが、こなごなになる。
「メル・レー・トゥ王女は、いくつになる?」
「は、三番目の月で十五……今はまだ十四です」
「充分だ」
ジェアはテラスを降り、早足で執務室に向かいながら、叫んだ。
「書記はおるか! メルに親書する!」
【全二十八回】 |
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