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■星野ソラ

【タイトル】 恋というもの・二巻(2)
【作者】 星野ソラ

 大会当日、王室席で次期女王の
クローディア殿下が見守っているなか、大会は始まった。
 クローディア殿下っていつ見ても綺麗だな…
まさに王室にいる方だな。
 でも気のせいだろうか、殿下を見てるとどこか
であった事があるような気がするな。
 で、そんな俺は、アントンとアリッサの後を追って、
二人の話し声が聞こえるぐらい
の距離の席に座っていた。
 なにやっているんだ……俺は、
まるで息子の様子を見にきた母親じゃないか。
 まあとにかく二人の様子は……だめだ、
アントンが石のように固まっている。
「アントンさん?大丈夫ですか?」
「だ、だひしょうふでふ!!」
喋れてない。
「ふふふ、アントンさんって
 本当に面白い人ですね」
「はははは……」
 それから1時間が経過し、Aブロックの試合が終了した。
試合も観客も壮大に盛り上がっていた。
 アントンの様子は何とか落ち着いたようだ。
 ん?気のせいだろうかすこしアリッサが
足を痛がっているような様子があるな…。
「あ、大丈夫?アリッサさん」
 どうやらアントンも気が付いたようだ。
「…え?」
「足痛いんでしょ」
「いや、大丈夫ですよ。いつものことです」
 アントンが突然立ち上がった。どうしたんだ?
「ちょっと待ってて!」
「え!?」
 アントンが突然、走って会場から出て行った。
何してんだ……?
 数分後、Bブロックの試合が始まろうとした時、
アントンが帰ってきた。
そのアントンの手にはジュース缶の二つだった。
「これを飲めば、少しは痛みをゆるくできるんじゃないかな」
「…え」
 そうアントンが言うと、アリッサにジュース缶を渡した。
 彼女はすこしジュース缶をボーっと見たあと、
蓋を開けてそっと飲んだ。
「あ!これって……」
「そう!アリッサさんの好きなメロンジュース!
 ……おいしい?」
「はい!おいしいです!」
「そりゃ、よかった!」
 二人ともかなり微笑んでいた。
 本当の恋人のように…。
 アントンとは随分、学園からの腐れ縁だった。
 いつも彼女が欲しくて嘆き、
仕事も見つからなかった。
 でも、本当に面白く感じた。
 こいつといるといつも飽きなかった。
 そう思うと、アントンに彼女ができる事に、
 なぜか寂しい気分になっていた。
 なぜだろうな……。

つづく

■星野ソラ

【タイトル】 恋というもの・二巻(3)
【作者】 星野ソラ

そしてBブロックの試合が終わり、
 Cブロックの試合が始まった。
観客は熱狂し、アントンたちも
盛り上がっているようだ。
「うお!すごく盛り上がってきたね!」
「確かにすごいです!」
「やっぱりこの大会を見ていると
 僕にも闘志が燃えてくるよ!」
「……え?」
 ん?アリッサがアントンの言葉を聞いて
表情が固まった?
『やっぱりこの大会を見ていると
 僕にも闘志が燃えてくるよ!』
「あ……」
『やっぱりこの大会を見ていると
 僕にも闘志が燃えてくるよ!』
「いや……!」

『やっぱりこの大会を見ていると
僕にも闘志が燃えてくるよ!』

 

「アリッサさん…?」
様子がおかしいと思ったアントンは
アリッサの肩に触れようとしたとき。

 

「え……」

 アリッサが魂を抜かれたように床に倒れた。

 

つづく


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