≪前頁 ・ 第7回展示室へ戻る ・ 次頁≫

■星野ソラ

【タイトル】 恋というもの・一巻(3)
【作者】 星野ソラ

 俺達はアリッサと名乗った少女の
住んでいる場所へ向かっていた。
 道中、アントンとアリッサが
話が盛り上がっていたが、
なんだか見ててイラッとした。
「つきました!」
 アリッサが指を指した。
 その先には白い壁に赤い十字マークの
着いた施設『病院』だった。
つい最近設立されたばかりなので真新しい。
「私、学園の休日には病院で足の治療をしていまして、
 どうも学園から遠いので治療が終わるまでここで
 泊まらしてもらっているんです」
 確かに学園から王都まで遠い、
定期的には来れないからな。
「今さっきのは、病院にいく前に一休みしたく
 休憩所に寄ろうとしてたら、
 ああなってしまったのです」
 アリッサの顔が少し恥ずかしそうに赤く染まった。
 どうみてもいい子だよな…、
なんであんな変態発言に賛成したのかが本当に不明だ。
「アントンさん!リットンさん!
 今日は本当にありがとうございました!」
「別に気にしなくていいよ、ただ怪我がなくてよかったよ」
 アリッサの顔がまた赤くなった。
 本当にアントンに惚れたのか?
「あの…もしよかったら、私がここに一ヶ月いますから、
 時々、遊びに来て欲しいのですが……」
 たぶん変態アントン狙いだろうな…。
「なあリックス…今さっきから
 僕の事を批判的に思ってない?」
「気のせいだ、気にするな」
「いま矛盾に言ったぞ…」
 まあそれは置いといて……。
「休日にしてはかなり長いな、たしか学園の休日は
 二日間か三日間だったはずだが?」
「今回受ける治療が長くなるので
 今回学園長から許可を取ってあるんです」
 そうか、ここでは知り合いは少ないだろう、
話し相手がほしいからか。
 特に———
「そうなんだ、…もし僕でよかったら
 話し相手になってあげるよ」
「本当ですか!アントンさん!……うれしいです」
 彼女はアントンとはかなり仲良くなったみたいだし、
いい話し相手になるかもな。
 まあこういう理由なら許してやるか。
「これでやっと彼女いない暦が……!!」
 だがこの性格はまずいと思う。

 それからアントンと俺はアリッサがいる
病院に通っていた。
時にはアリッサのベランダにある花に
彼女の代わりに水をやったり、
時には一人ではいけないところでは助けたり、
時にはアリッサのリハビリを手伝ったり……、
そして話にも花を咲かした。
いままでの思い出の話……、
ロレントでの出来事を話そうとしたら、
アントンの顔が白くなり震えだした時には
俺とアリッサは大笑いした。
でも俺が話したからでなくアントンのことで笑ったのだろう。
もう2週間も経つが、この頃アントンとアリッサが
二人きりでいるのが多くなった。
やっぱり彼女は本当にアントンのことが好きなんだろうか?

 つづく

■星野ソラ

【タイトル】 恋というもの・二巻(1)
【作者】 星野ソラ

 そんなある日。
「リックス!!リックス!!」
 カフェで寝ぼけた頭をコーヒーで覚めようとしたとき、
 アントンが公共マナー違反ぎりぎりの爆音
で俺の名前を言ってきた。
「どうしたんだ、アントン」
「誘ってくれたんだ!!」
 意味不明すぎる。
「落ち着け、ゆっくり言ってくれ」
「あ、ごめん…」
 アントンが深呼吸して、何とか落ち着いたようだ。
「今度、武術大会が開催されるだろ?」
「そういえば、そんな時期だったな」
「実は!アリッサさんから大会の観戦に 
 一緒に着て欲しいって誘ってくれたんだ!」
 俺は飲んでいたコーヒーを壮大に拭いた。
「う、嘘だろ?」
「これで僕は……いやっほぅ!!」
 本当に世界は不思議だな…
 彼女が欲しいと嘆いた奴が
たった数週間でこうなるものなんだな……。
「とにかく開催される当日は俺一人で
 病院に行くからな!いいな!」
 なんだか自慢されているみたいでむかつくな…。
 だが、ついにアントンに彼女か…。

 つづく


≪前頁 ・ 第7回展示室へ戻る ・ 次頁≫