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■ゆきの翔

【タイトル】 着せ替えキーア?
【作者】 ゆきの翔

「特務支援課さ〜ん、お届け物で〜す」
「は〜い。って、結構おっきい荷物ね」
 荷物を見て、エリィが少し驚いた。書類に
目を通すと、依頼主の欄にティオと記されて
いた。
「あら、ティオちゃんの? もしかしてみっ
しぃグッズかしら」
 それにしては荷物が大きすぎる。それこそ
みっしぃそのものが一匹はゆうに入るほどだ。
「あ、エリィさん。その荷物わたしのです
か?」
「えぇそうよ。ティオちゃん、一体何を注文
したの?」
「ふふふ、一緒に見ますか?」
 そういって、ティオはおもむろに箱を開け
た。箱の中には大量の、
「ふ、服?」
 エリィが目を丸くした。しかも、普通の服
ではない。
「何よこれ……ナース服に警察の制服、これ
は確かリベールにあるジェニス王立学園の制
服じゃないの」
 他にも警備隊の制服やら東方風の服やら色
んな服が入っていた。
「さすがエリィさん。ジェニス王立学園の制
服を知っていましたか」
「それくらい知ってるわよ——でも変ねぇ。
ティオちゃんが頼んだものにしては、少し小
さくない?」
 そう言ってエリィは手にしているジェニス
王立学園の制服を、ティオの身体に当てた。
「うん、やっぱり小さいわ。注文間違えた
の?」
「いいえ、これでいいんです」
「え? でも?」
「これは、すべてキーアに着せるものです」
「……え?」
 ティオの言葉に、エリィの中にある何かが
パキンと割れた気がした。

 数時間後。

「ただいま〜」
「今日も疲れたなぁ、ロイド」
「あぁ、そうだな」
軽く会話をしながらロイドとランディが帰
ってきた。
「あれ? いつもだったらキーアがタックル
してくるんだけどな」
「そういやそうだな。それにティオすけたち
もお出迎えなしかよ」
そう二人が不思議に思うもつかの間、
「ロイド〜〜〜〜っ!」
二階から元気いっぱいな声を出して、少女
がロイドに突進してきた。が、
『!?』
入り口で待ち受けていたロイドとランディ
は目を疑った。そして、叫んだ。
「な、なんでセルゲイ課長とおんなじ格好し
てんだ〜〜!?」
「エヘヘ〜、エリィとティオに着せてもらっ
たんだ〜」
屈託のない笑顔の花を咲かせたキーアの背
後で、エリィとティオが「あははは……」と
気のない笑みを浮かべていた。
「ちょっとやりすぎたわ」
「わたしも、そう思います」
そんな二人の胸中をよそに、キーアは笑顔
でサスペンダーベルトをパッチンパッチンと
伸ばしては離して遊んでいた。

■ゆきの翔

【タイトル】 髪型を変えて
【作者】 ゆきの翔

「髪、少し伸びたかなぁ?」
 アネラス・エルフィードは、鏡に映ってい
る自分の前髪を手でいじりなから呟いた。
「う〜ん、思い切って切っちゃおっかなぁ。
あ、でもそれじゃあこのリボンが生かせなく
なるか」
 唸りながらアネラスが決心した。
「うんっ! 髪型を変えよう」
 一旦髪に付けていた、お気に入りの黄色い
リボンをほどき、アネラスは真剣な面持ちで
鏡に向かった。
「……とは言ったものの、どんな髪型がいい
かなぁ?」
 髪の長さは肩を覆うくらい伸びていた。
「まずはシェラ先輩みたいに三つ編みにして
みよっかな?」

 数分後。
「う〜ん、やっぱ長さに問題があるかなぁ」
十分伸びきっていない髪での三つ編みは、
目標となる先輩遊撃士のような、優雅さを兼
ね備える髪とはほど遠かった。
「さすがにシェラ先輩みたいにならないかぁ。
最低でも腰くらいまで髪の長さが必要だね」
そう言って結った髪をほどいた。
「もう少し可愛くて、動きやすい髪型がいい
かなぁ。あ、そうだ。エステルちゃんみたい
なツインテールもいいかも」
そう言うや、自分の手で髪を二本にまとめ、
やや後ろ気味で固定させた。
「お、なかなかいいかも。あ〜でも、そうな
ると……」
そこで重大なことに気がついた。
「リボンがもう一本必要になっちゃうかぁ」
そこでツインテールを諦め、アネラスは髪
をまとめていた指を離した。
「——髪型を変えるのも結構難しいなぁ。そ
れだけいつもの髪型がしっくりとしてたのか
なぁ」
でも……一度決めたことは曲げたくなかっ
た。アネラスはその後も試行錯誤重ね、新し
い髪型を見つけていった。

「おい、スチャラカ演奏家。なんで俺と一緒
にボースまで来たんだよ」
「なぜって、そりゃボースには美しい女性が
たくさんいるからに決まっているじゃないか」
アガットとオリビエが、ボース国際空港に
降り立った。アガットは顔をしかめながら、
オリビエを無視するようにギルドに向かった。
「あ、アガット先輩、おはようございます。
オリビエさんも一緒なんですね」
ギルドの中に入ると掲示板の前にアネラス
が立っていた。それを見たオリビエは、
「おぉう、アネラスくん、髪型を変えたのか
ね?」
「あ、はい。可愛くて動きやすい髪型にって
考えてたら、この髪型になりました」
その髪型は後頭部で一つにリボンで結った、
いわゆるポニーテイルだった。
「似合いますか?」
「モチロンだとも。なぁ、アガットくん」
「なんで俺に振るんだよ!」
そんな二人のやりとりを見て、アネラスは
微笑んだ。
「ありがとうございます。じゃあ私は手配魔
獣の退治に行ってきますね」
そう言ってギルドを出て行ったアネラスの
髪は、お気に入りのリボンと一緒に柔らかく、
元気いっぱいに揺れていた。
「うん、今日も頑張るよっ!」


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