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■イッチー

【タイトル】 閃光の戦士 シルバリオン
【作者】 イッチー

「そこまでだ!」

 闇夜を切り裂く鋭い声が響き渡る。

「な、何者だ!?」

 呼ばれた者達は慌てて周りを見渡し、
そして雑居ビルの屋上に人型のシルエットを見た。
その者はビルの屋上から軽々と地面に飛び降り、
つかつかと歩み寄ってくる。
ビルとビルの隙間から差し込む月夜の光が
そのシルエットのベールを剥がした時、
驚愕の声が響き渡った。

「き、貴様はシルバリオン!」

 銀色の鎧のようなスーツと仮面を身に纏い、
黒のマフラーを首に棚引かせたその姿。
それは彼ら−マフィアや様々な犯罪組織達にとって、
忌むべき相手。

「お前達の行っている武器の密輸、その行為を
断じて許すわけにはいかない!覚悟しろ!」

 突きつけた指に、犯罪者達が思わず慄く。

「お、お前ら何ビビッてやがる!相手は一人だ!
撃てっ!撃ちまくれっ!」

 その合図と共に部下達が導力式機関銃を一斉射撃。
しかし、シルバリオンの体に傷一つ付かなかった。

「なっ!」

 その事実に驚愕する間もなく、近くの相手に一瞬にして
踏み込みで吹き飛ばす。
相手に反撃させる間も与えずに次々と倒していく様は、
まさに電光石火。
あっという間にこの場を取り仕切るボス以外を
倒してしまった。

「後は、お前だけだ!観念しろ!」

 残されたボスはその状況に愕然とし、手に持っていた
導力銃を落とした。
そして頭を抱えて、何か唸るように呟き始めた。

「…もう、…これ、しか…」

 ポケットから一粒の何かを取り出した。
禍々しい程の色をした『それ』を見た瞬間、
シルバリオンを目を見張った。

「その薬は!?」

 ボスは『それ』を飲み込むと、次第に体を震わせ、
そして−吼えた。

「ウオオオォォォォン!」

 そこにいたのはもう人間ではなかった。
人狼ともいうべき『化け物』

「くっ、お前は『教団』と繋がってたのか!」

 もう一度吼えると、先程のシルバリオンと
勝らずとも劣らずの早さで攻め込んでくる。

「っ!」

 咄嗟に両腕で相手の牙を防ぐが、その牙は
導力銃ですら弾き返すその腕に深く食い込んでいた。
人狼はウルルゥ…と、もはや人間の欠片もない声を
漏らし、シルバリオンの両腕を噛み千切らんと
更に顎に力を込める。

「魔に身を堕した者は、もう人間には戻れない。
…ならば!」

 その時、赤き血が流れる両腕が光ると同時に
人狼を大きく吹き飛ばした。

「トンファーレイブレードォ!」

 シルバリオンの両腕その側面から
巨大な光の刃が光り輝いていた。

「必殺!クロス!」

 相手の体を、左の輝刃で切り上げ、右の輝刃で切り下げながら
後ろに反転。

「ブレイク!」

 両腕を後ろに突き出し、切っ先を突き刺した。
人狼を大きく吼えると、その巨躯を地面に倒し、
そして塵となって消えた。 
シルバリオンはその様を見続けながら叫ぶ。

「『デモンズ』教団!絶対、許さないからなぁー!!」

 この物語は、一人の悲しい復讐劇なのである。


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