──その日、“日常”に穴が空いた。
東亰郊外の《杜宮市》に住む
17歳の平凡な高校生《時坂洸》は、
ある日のバイト帰りに、深夜の旧市街で“事件”と遭遇する。
柊明日香──
４月に帰国子女として編入したばかりの
容姿端麗にして明朗快活、人気者のクラス委員長が、
タチの悪い不良たちに絡まれ、連れて行かれようとしていたのである。
『なんでこんな時間に……！』
舌打ちしながらも、意を決して路地裏へと追いかける洸。
果たしてそこには──
この世のものとは思えぬ、おぞましくも美しい空間と、
名状しがたき怪異に喰われかかった不良たちと……
──虚空から、
鬼火のように青く輝く“剣”を取り出す“彼女”の姿があった――。
World
大規模な商業地区に加え、副都心的な官公庁・オフィス街もある他、昔ながらの街並みや歴史的な建物が保全されている地区も存在する。
公共交通機関は杜宮駅に国鉄と私鉄の計3路線が乗り入れている他、8年前から都営の新都市交通システム（モノレール）が犀玉～多摩地域～神那川を縦断する形で運行されている。
また、市北西には国営施設である「杜宮記念公園」なども存在している。
駅前広場
杜宮駅が入っている駅ビルのエントランスエリアと連結する広大な公共スペースで、杜宮市の中心に位置している。
ペデストリアンデッキとなっており、杜宮市のアクセスポイントとして昼夜問わず多くの人が行き交っているほか、シンボルマークにもなっている中央の巨大なアーチ状のモニュメントは待ち合わせ場所としても有名。
多摩モノレールやバス停、鉄道など、さまざまな交通機関が集約されているほか、大型量販店「スターカメラ」、「オリオン書房」などもあるため、放課後に駅前広場に立ち寄る学生も多い。
杜宮学園
コウやアスカが通う、歴史ある男女共学制の高等学校。杜宮市の中心地でもある杜宮駅からは徒歩圏内に位置しており、立地条件は悪くない。
1年～3年まで、各学年の教室が入っている本校舎のほか、図書室や各種特別教室が集まっている第二校舎、体育会系の部室や食堂・屋内プールが併設されたクラブハウスなど、ひと通りの施設が揃っている。
杜宮商店街
昔ながらの面影を残す、地域密着型の商店街。
時代を感じさせる「杜宮商店街」と書かれたアーチをくぐると、メインストリートの両脇に八百屋、精肉店、金物・鍛冶屋、スポーツ用品店など数々の商店が軒を連ねており、この商店街で生活必需品がひと通り揃うようになっている。
コウの友人、リョウタの実家である「伊吹青果店」もこの商店街にあるため、コウやシオリにとっては昔馴染みの人々が暮らす地域でもある。
九重神社
コウの祖父・ソウスケが神主を務める多摩地域でも古い歴史を持つ神社のひとつ。
周囲を木々に囲まれた古めかしい神社だが、全国に100以上の分社を持つ《叢雲大社》とも遠からぬ縁があり、神聖な場所として地元住民に広く親しまれている。
敷地の外れにはソウスケが孫娘のトワと暮らしている九重家があり、併設されている道場では九重流柔術を学ぶ生徒たちの姿を見かけることもある。
アクロスタワー
東亰都、杜宮市、北都グループの協力によって3年前に竣工した杜宮市のランドマーク。観光名所としても有名で、杜宮市を一望できるスカイラウンジからの眺めは関東一という声も。
1Fの「アクロスショップ」、10Fの「杜宮市立美術館」などさまざまな商業施設・文化施設が入っており、20Fにある劇場「アクロスシアター」ではデビュー3周年を迎えるアイドルグループ《SPiKA》の記念ライブが企画されている。
七星モール
「サブカルといえば七星」といわれるほど個性的な店がひしめく2階建ての複合施設で、いつもさまざまな層の客で賑わっている。
装備強化が可能なジャンク屋《城島無線》やコスプレ用品を扱う《ピクシス》のほか、「魔法少女☆まじかるアリサ」関連グッズを販売している「アニメイト杜宮店」、特殊なアクセサリを取り扱う模型・玩具店「コトブキヤ」といった店が並んでいる。
スターカメラ
全国規模で展開している大型量販店。《北都グループ》《天乃製作所》をはじめとした各メーカーの新製品から、サイフォン、ゲーム、音楽CDといった商品まで、幅広い商品を取り扱っている。
Keyword
10年ほど前から普及しはじめた個人用情報端末で、通話以外にも高度な情報サービスを利用することができる。
SNSやゲームなど多彩なアプリが充実しており、かなりの割合で浸透している。
所有者の生体情報を認証し、同期する機能を持っており、それを利用したサービスやセキュリティシステムなども続々と開発されている。
「門」と呼ばれる特異点を起点に、現実空間が異界と重なる現象。
その特徴としては、異界の顕われ方が「迷宮」という形を取っていること、現実世界にある何らかの事物が「門」のきっかけになっていること、そして“グリード”と呼ばれる“怪異”が徘徊していることが挙げられる。
多くの場合、一般人が異界化を認識することはできず、原因不明の事件や不可思議な自然災害、あるいは都市伝説や怪談として処理されることが多い。
異界の迷宮内を徘徊する正体不明の敵性存在。種類・形状・サイズはさまざまだが、成長・生殖といった生命活動は確認されず、何らかの霊的な存在とも何者かに造られた異次元生物ともいわれている。
銃・ナイフ・爆発物ではダメージを与えられないが、“適格者”が顕現させる異界素材で構成された“ソウルデヴァイス”では確実なダメージを与えられる。
異界と関わった“適格者”が発現させる特殊な兵装。形状は千差万別で、ひとつとして同じものは存在しない。
異界由来の素材と霊子体によって構成されており、物理攻撃がほとんど効かないグリードに対して有効なダメージを与えられる。
10年前、東亰を中心に発生した大震災。
2005年3月15日、午前11時38分、雲ひとつ無かった空が前触れもなく緋色に染まった直後、M7.5クラスの地震が東亰全域を襲った。断続的に余震が続く中、地震に伴う火災や津波、地中で発生した毒性ガスに加え、竜巻・落雷・寒波などの局地災害が各地で発生した。
死者2万2千人、行方不明者7千人という数字は衝撃的で、東亰のみならず日本全体に暗い影を落としたが、5年に渡る集中復興計画によって都市インフラは災害前よりも強化され、現在では“過去”の出来事となりつつある。
異能のエージェントを擁する謎の組織。「異界の管理」というスタンスで裏の世界で広く活動しており、在野の魔術師・霊能力者・呪具職人に幅広いネットワークを築いている。英国に第一本部、米国に第二本部があるとされているが実態は不明。
異界への適性が見出された場合、希望があれば本格的な訓練が施され、ソウルデヴァイスの扱いや異界・怪異の知識を学んだ後、エージェントとして全世界で活動することになる。
70年前の技術革命以降、世界の経済・産業を主導してきた12の巨大企業連合。「異界の利用」というスタンスで国家の枠組みを超えた影響力を持つが、表の世界に過度な干渉はせず、国家間の争いについても基本的に不干渉を貫く。
各国の参加企業は互いに協力しつつも競争しており、新エネルギー、導力ネットワーク、サイフォン、異界由来の新素材などの分野でしのぎを削っている。
日本に本拠を置くのは「北都グループ」「天乃製作所」の2グループ。このうち「北都」は設立当初からの主要メンバーだが、「天乃」は数年前に既存の「駿河重工」を押しのける形でゾディアック入りを果たしている。
ネメシスとは新技術やソウルデヴァイスの分野で協力することも多いが、異界の扱いを巡って対立し、衝突や暗闘にまで発展することも少なくない。
今をときめく、5人組のアイドルグループ。本格的な歌唱力とキュートなダンスが魅力の正統派のアイドルグループとしてアイドル業界はもちろん、ミュージックシーンでも注目を集めている。
元々養成所で同期だったリオンを含む3人組でスタートしたが、昨年に後輩メンバー2人が加入。新生《SPiKA》として活動を再スタートさせたことをきっかけにさらに人気が上昇し、代表曲『恋のシューティングスター』がTVアニメ「魔法少女☆まじかるアリサ」の主題歌に起用されたことも話題となった。
リオンたち同期メンバー3人は養成所時代からのライバルでお互いに切磋琢磨する仲。レッスンが忙しく学業もあるため、プライベートで交流する機会は少ないが決して仲が悪いわけではなく、つらいときは励まし合い、くじけそうなときは叱咤し合う仲。後輩メンバー2人も公私ともに仲がよく、先輩たちを尊敬しつつ互いに支えあっている。
