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Clare Pre Story - Title

 

 
月の儀式 -A CEREMONY OF MOON-
 
A Ceremony of Moon
 聖堂には、無数の蝋燭が灯っていた。左右に尼たちが蝋燭を手に持って立ち、聖歌を歌っている。祭壇の上には、数人の尼僧を従えた老婆が立っていた。腰は完全に曲がり、白く高貴な身分の証のヴェールを顔に垂らしている。彼女が暁の巫女だった。本来ならば、ごく一部の高等尼僧以外は、彼女と顔を会わす機会はなかった。
 絨毯の敷かれた中央の道を行く、数人の若い尼の中にクレールやサフィーユも混じっていた。この中から、次の巫女が決められることになっていた。
 候補者が巫女の前に整列すると、聖歌は終わった。祭壇に掲げられた大きな燭台に火が灯され、巫女の付き添いの尼僧たちは、神に奉じる舞いを始めた。クレールは、初めて見た巫女の姿や尼僧たちの舞いに心を奪われていた。
 老いた巫女の声が聖堂に響き渡った。

「一族の者たちよ、皆、心して聞かれよ。わたしはもうすぐ散り逝く時を迎える。一族の習わしに従い、これより、我が跡を継ぎ、神の心と、教えと、その力を継承する人物を指名する。これは信心と、呪術に長けた者を、厳正なる審査にて選別したものである」
「私の後を、その道を継ぐ者の名は・・・・」
 巫女は手に持った杖を高くかざした後、ゆっくりと振り下ろした。
「クレール。汝を巫女として我が後継と定める」
 杖の先は、クレールに向けられていた。
 その名を聞いたとき、誰もが我が耳を疑った。確かにクレールの人柄は万人の認めるところであった。同時に、呪術の力がないことも知れ渡っていた。彼女には厳しい巫女の務めを果たすことは出来ないと、誰もが思った。
 周囲の困惑をよそに、巫女は続けた。
「古の習わしに従い、暁の巫女となるクレールには100日間の修行の旅を課す。遥か東の地に赴き、神の塔へと旅立つのだ。その従者にはサフィーユ、汝を任命する」
 誰もが呪術に長けたサフィーユを巫女に押すであろうと思っていた。聖堂は静まり返った。
「神の塔にて修行を終えたとき、月の儀式の完了とする。その後直ちに太陽の儀式をとりおこなう。」
 一番我が耳を疑ったのは、他でもないクレール本人であった。なぜ自分が選ばれたのか。
 巫女は手招きをしながら言った。
「さあ、クレール。近くへ寄りなさい」
 クレールは言われるままに巫女の側に行き跪づいた。
「暁の巫女さま。なぜ、わたしなどが・・・・」
 巫女は自分の顔を覆ったヴェールをめくりあげた。そこにあったのは、いつか森で出会った、妖精と歌っていた老婆だった。
「クレールや。本当に、久しぶりじゃ・・・・」
「お婆さんが・・・・暁の巫女とは、思いませんでした」
「これ!暁の巫女に対し、お婆さんなどと無礼ですよ」
 お付きの痩せた尼僧が、クレールを叱った。
「いいのじゃ」
 巫女はその尼僧を制止すると、クレールの手をしっかりと握って言った。
「クレール、お前さんには、いずれ色々と話すつもりでいたが・・・・もうわたしに残された時間は少ないようじゃ。」
「そんな・・・・お婆さん・・・・」
「これも運命・・・・そして、お前さんが暁の巫女に選ばれたのも、な。人にはそれぞれ役割というものがある。最後にこれだけは、伝えておきたくてのう。」
 クレールは巫女の、骨張った手を握り返した。

 つい昼間の出来事であるが、もう遠い昔に思われた。
「どうしてお婆さんは、わたしなどをお選びになったのだろう・・・・私の中には・・・・恐ろしい力が眠っているというのに・・・・」
 クレールは窓の向こうに見える月に目をやった。優しく、その光でクレールの頬を濡らしている。 「恐ろしい力・・・・」
「神様・・・・貴方はなぜ、わたしにこのような力をお与えになったのですか・・・・」

 





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