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Clare Pre Story - Title

 

 
森と老婆 -AN OLD WOMAN AND FAIRIES-
 
 その日、クレールはいつものように薪を集めに森へ出掛けていた。あまり良い薪が見つからず、普段は寄らないこの森へと歩くうちに、微かに声が聴こえて来るのが感じられた。それはやさしい歌声だった。
 クレールはその歌声をつきとめたいと思った。声のする方へと森の中を少し進むと、下草の茂みに突き当たった。その茂みの向こうから歌が聴こえてくる。クレールは草の影から、そうっと首を出して向こう側を覗いてみた。
 そこには身なりの良いエルフの老婆が座り、歌っていた。その周りに小さな影が幾つか、ゆらゆらと漂っていた。最初、クレールにはそれが蝶に見えた。しかし、じっと見ているうちに、それは別のものであることに気付いた。
An Old Woman and Fairies「あれは妖精だ・・・・妖精って本当にいたんだ。」
 そう思ったとき、老婆はクレールの気配に気付いたようだった。
「そこに誰か、いるのかい?」
 老婆の声にクレールは驚き、首を引っ込め身を堅くした。
「こっちへおいで。お前さんも、ここであたしの歌を聴かんかね」
 その優しげな口調に、クレールはゆっくりと立ち上がり、老婆の方へ近付いていった。妖精たちはクレールを警戒し、老婆の後ろに隠れてしまった。
「お邪魔をしてごめんなさい。わたし、クレールって言います。・・・・その、お婆さんの歌に誘われてここまで来てしまったんです。すると、お婆さんの周りに妖精の姿が見えたもので・・・・」
 老婆は微笑みながら頷いた。そして後ろを振り返り、妖精たちに言った。
「お前たち、隠れてないで出ておいで。この娘さんには、お前たちの姿が見えるそうだよ。優しそうな女の子だよ」
 老婆の陰から一人、妖精が顔を覗かせた。続いてもう一人。クレールに害意のないことを知ると、妖精は安心してクレールの前に羽ばたいて出てきた。一人の妖精が、しばらくクレールの周りを調べるようにくるくると回った後、クレールの頭に飛び乗った。それにつられて他の妖精たちも、肩や掌の乗り心地を試すように周りに集まってきた。
「クレールと言ったね。お前さん、妖精たちに気に入られたようだよ」
 老婆は目を細めてその様子を見守っていた。
「妖精はね。普通の者には見えないんだよ。仲よくなれる者はもっと少ない。お前さんはよい資質を持っているようじゃ。きっと素晴らしい巫女になれるよ」
「そんなことありません。巫女の修行ならもう何年も続けていますけれど、わたしは一番のお荷物で、託宣も呪術も、まだ何もできないんです」
「ゆっくりと憶えてゆけばよい。人はそれぞれに、合った速度で成長するのが一番なのじゃ」
 そう言われて、クレールはほっとした気持ちになった。同時に、かなりの時間が経過していたことに気付いた。
「お婆さん、今日はどうもありがとう。いろいろと教えてくださって。御用の途中だったので、これで帰ります。また、ここに来てもいいですか」
「ああ大歓迎じゃ。なあ、お前たち」
 老婆は笑みを浮かべながら、妖精たちの方に目を向けた。
「クレール。また来てね。」
「こんどはお歌を聴かせてよ。」
 妖精たちはクレールにすっかりなついていた。老婆と妖精たちに別れを告げ、クレールは村へ戻って行った。その後、クレールは森へ出掛けるときは、必ずこの森へ立ち寄り、妖精たちと一緒に歌ったりお伽話をしたり、楽しい時間を過ごすようになった。けれども老婆とは、その時以来出会うことはなかった。

 なかなか寝つけないクレールは、何度も寝返りを打ちながら、夢と現つを行き来していた。今度は、眼前に浮かんだのは昼間の月の儀式だった。

 





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