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密約 -THE MALICIOUS CONTRACT- 赤い絨毯が敷かれた部屋には、まだ明かりが灯っていた。 壁には大きな肖像画が掛けられている。赤い軍服と三筋の金鎖の肩章が、爵位を持つ人物であることを語っていた。派手な飾りを付けた帽子の下には、片眉をしかめ、金で装飾された片眼鏡を頬に乗せた、初老の男の顔が描かれている。 それと同じ顔の男が、息を潜め、一層眉をしかめて木箱を覗き込んでいた。 「これほど純度が高く大きなものは滅多に見つかりません」 僧衣をまとった痩せた男が、骨張った手を揉みながら言った。 「発掘されたものは、遺跡の謎に関するもの以外でも、全て本部に報告することになっております。報告されたもののうち、本部が引き取りに来るのは宝石や貴金属の類ばかり。調査と称して、彼らは塔を食い物にしているのです」 片眼鏡の男は、視線を僧侶に移した。 「それでお前も、これで一稼ぎしようと思ったのだな」 「め、滅相もない。お館様が宝石の蒐集家であることは存じております。本部に徴収されてしまうより、お館様のご自慢の一つに加えられた方が、石も本望かと・・・・」 「ふふふ。物は言いようだな。お前の理由がどうであれ、儂はこれが気に入った。この輝き・・・・大きさ、透明度。輝晶石の中の輝晶石というに相応しい。確かに、教会の手に委ねるより、儂の手元にある方が、この石も輝く意味があるというものだ。さて、後はこれを いくらで儂に譲ってくれるかだが」 「お館様のお気の済むように」 「これを教会に知られぬように儂のところへ運ぶには、相当な金を使ったことだろう。確か、お前は以前、司祭になりたいと申しておったな」 片眼鏡の男は、木箱を机に置くと膝の上で両手を組んだ。 「塔の発掘は行き詰まっていると聞いている。それに加え、今の司祭に醜聞でもあれば、お前に司祭の冠が回ってくるのではないか」 「お館様・・・・」 「儂の手の者をお前に貸し与えよう。お前の夢をかなえることくらい朝飯前の連中だ。お前は司祭となり、塔発掘の指揮をとるがよい。儂は出土した宝飾品の一部をもらう。悪くないはずだが」 「お心遣い、ありがたくお受けさせていただきます」 黒い取引が成立した。その時だった。 |
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