■しげみな　あきら

それはあるとき　あるところ
おそらのめがみさまが
ちいさく　くしゅんと　くしゃみをしたよ
そのとき　めがみさまの　あしもとで
うとうと　うとうと　ねていた　たねが
ふわり　ふわりと　まいあがり
ついにはおそらを　ころげておちた

てん　てん　ころり
とん　とん　かたり

ちいさなたねは　おそらのはてから
たかい　たかい　やまをころげ
おおきな　おおきな　おかをころげ
ひろい　ひろい　うみをわたって
ついには　ちじょうに　ころがりおちて
そうして　やっと　むにゃむにゃと
ねぼけまなこで　めをさましたよ

あれあれ　ここはどこだろう
とってあたたかで　すてきなところでねてたのに
なんだか　ここは　ちょっぴりさむいや
それに　とっても　おそらが　とおいなあ

もぞもぞ　おしりを　うごかして
たねは　きょときょと　あたりをみたよ
やまも　うみも　ちかくにあるけど
おそらだけは　とてもとおくて
たねは　ぱちぱち　めをまたたかせ
そうして　えいっと　せのびをしてみた

ほんのちょっぴり　おそらはちかくなったけど
それでも　おそらは　まだまだとおくて
たねは　なんとか　かえらなくっちゃと
とぼとぼ　みちを　あるきだしたよ

さいしょに　であったのは　おおきなうま
びっくり　とびあがった　たねに
うまは　ぺこりと　あたまをさげた
やあやあ　たねくん　こんにちは
きみは　どこへいくのかな

おおきな　うまに　おっかな　びっくり
たねは　おそらに　かえるとちゅうだと
ぽそぽそ　ちいさなこえで　せつめいした

なぜなら　たねは　ひっこみじあん
おおきな　うまに　ちっちゃくなって
いまにも　ぴゅんと　にげだしそう
けれど　うまは　うんうん　うなづいて
ひょいと　たねを　せなかにのせた

それなら　ぼくが　つれてったげる
おそらに　かかる　はしをしってるよ

たかく　ひひんと　いなないて
うまは　びゅんと　はしりだした

あっちを　ごらん　にしのそらだよ
おそらにはしが　きらきら　きらきら
かかっているのが　みえるだろう

びゅん　びゅん　とおりすぎる
けしきの　むこうに
きらきら　ななついろの　はしがみえた

はしの　むこうは　おそらのかなた
きっと　めがみさまに　あえるはず

ひとばん　はしり
ふたばん　はしり
けれど　はしは　とおくて　とおくて
やがては　うまも　はしりつかれて
とぼとぼ　ふたりは　あるきだしたよ

あのはしまで　あとどれだけ　はしるのだろう
もうすこし　もうすこしだよ
そうしたら　きみも　めがみさまに
おともだちだよって　おしえてあげる

しょんぼりあるく　ふたりを　みかけて
そらから　きれいな　はやぶさが
ひらり　ひらりと　まいおりてきた
まあまあ　あなたたち　どうしたの
ぐったり　つかれて　たいへんそう

ぼくは　おそらにある　おうちへかえるんだ
あの　きらきらひかる　はしへいくよ
かくかく　しかじか　これこれと
たねが　はなすと　はやぶさは
うんうん　うなづき　つばさをひろげた

そういうことなら　わたしがとぶわ
あなたも　いっしょに　いらっしゃい

■しげみな　あきら

いうが　はやいか　はやぶさは
たねを　のせて　まいあがった
はやい　はやい　ぐんぐんと
はしは　ふたりに　ちかづいて
じめんでは　うまが　けんめいに
たったか　たったか　はしってる

さあ　いよいよ　はしにつくわ
えいっと　いっきに　とびのってね
ひらりと　ひるがえる　はやぶさのうえで
たねは　おしりに　ちからをいれた
はしの　ひかりは　きらきら　きらきら
まぶしさを　こらえて
たねは　いっきに　えいっと　とんだ

ななついろの　はしは
ぐんぐん　ちかづいて　ちかづいて
けれども　たねを　うけとめては　くれなかった

ぽふんと　なにかに　つつまれた　きはしたけれど
たねは　はしを　つきぬけて
どんどん　どんどん　おちていったよ

いくつも　いくつも　くもがあたって
ぽむ　ぽむ　ぽむと　おとをたてて　おちていく
ぐんぐん　じめんが　ちかづいてくる

うわあ　ぶつかる
きっと　とっても　いたいんだろうな
ぎゅっと　めをとじて
たねは　かくごをしたけれど
じめんは　ぽむっと　たねを　うけとめた

あれ　あれ
いたくないよ　いたくなかったよ
きょろきょろ　あたりをみまわしても
まわりは　ひろくて　ひらべったい　じめんだけ
ぽむぽむ　ふわふわ　したものは
どこを　みても　みあたらない

だいじょうぶ　おけがは　ないかしら
あわてて　そらから　はやぶさが
たねを　おいかけて　とんできた
ふたりは　おたがいを　みて　びっくり

まあまあ　ずいぶん　ぽむぽむに
あれあれ　すごく　まっしろに
なってしまったものだなあ

なんだか　きらきら　おちてきたけど
ふたりとも　けがは　なかったかい
おいついてきた　うまをみて
またまた　みんなで　びっくりしたよ

やあやあ　ずいぶん　ふわふわに
あれあれ　すごく　ぴかぴかに
なってしまったものだなあ

いつしか　はしは　みんなのうしろ
ななついろの　ひかりをのこして　きえてった
はしを　こえた　きれいなはやぶさは
さらさら　まっしろな　はねになったよ
はしを　くぐった　おおきなうまは
きらきら　きんいろの　たてがみになったよ

そして
はしを　すべっておちた　ちいさなたねは
ぽむぽむ　ふわふわ　きらきらの
くもの　ようふくに　つつまれてたよ

みんなは　みんなを　みくらべて
めがみさまの　おくりものだと　よろこんだ
おそらに　かえることは　できないけれど
とても　すてきな　プレゼントだと
たがいに　たがいを　たたえあった

おそらには　まだまだ　かえれないけど
もう　きっと　さみしくないよ
おともだちと　いっしょに
いつか　おそらに　かえるんだ

ぽむぽむ　きらきら　おようふく
めがみさまは　にあってるって
いってくれるかな

それから　それから
はやぶさと　うまと　たねは
たくさん　おともだちを　つくって
いまも　おそらに　かえるため
せかいの　どこかを　あるいてる

ひっこみじあんの　たねだから
きっと　ひとに　であったら
ぴゅっと　にげて　しまうけど
いつか　おともだちに　なれるはず

ぽむぽむ　ふわふわ　きらきらの
ひっこみじあんの　たねのこと
みかけたら　どうぞ　なまえをよんで

ぽむ　ぽむ　ぼくらの　ともだち
おそらの　みちは　こっちだよ
みんなで　いっしょに
めがみさまに　あいにいこう