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■クロイ

【タイトル】 空虚の導力器
【作者】 黒井隆二

「…………………は?」
 シスター・ベルが少々の間のあと開いたの口から
間抜けな声を漏らした。その表情は怖がってるな
驚きさじゃなく、呆れたな驚きさだっだ。なにせ、
目の前の少年が——
「だから、オレはリベールへ行くの!今すぐ!」
 驚くもしょうがない、彼らの現在地はエレポニア帝国
の最北部、飛行機はともかくバスすら届かないの村
である。しかもこの小さな村に外へ繋がったのトンネル
は先日の吹雪で閉鎖されて、ようするに、今この村唯一
の出口は魔物に満ちるの山道だった。
「いきなりなにを仰るのローラン君っ!?
そんなこと認めませんわっ!」
 考えも無く当たり前な答えに応じる少年ローランは、
「え〜しょんな〜」
 空気の抜けた風船のようにテーブル上に
垂れていた。シスター・ベルは「だらしない!」
いいながら食堂のテーブルを片付けを続けていた。
日曜日の朝は日曜学校の日であり、教会の施設に預けた
子供たちはすみやかにご飯を済んで、大広間で授業を
受けていった。すでに十六歳のローランは自分で
ゆっくり食事を進んでいる。
「なんで行かさないの?」
 毎日躾けてのお陰で自分の食器を台所へ運ばせた
ローランはさらにシスターに問う。皿を洗っている
シスターは流し向けたまま説教を始めた。
「何もかもです。どう考えでも貴方には無理です、
ただでさえトンネルは閉じされた、仮に貴方が
この村から出ても、一番近いの空港は何セルジュに
離れっているですわ。だいたい、貴方にはお金——」
「あるよん〜」
 危なく落としたカップをキャッチしたシスターは
ようやく振り向いた、そこはニヤニヤしてる少年が
財布みたいな小さな入れ物を遊んでいた。
「ローラン君!?貴方どうやって——」
「大丈夫大丈夫、立派なバイトです!」
 シスターを怒る、いやさらに怒らせる前に、
少年が返事した。
「いつ——」
「半年前から!」
「ど——」
「銀ジィの店!」
 長い付き合いからローランはすでにシスター・ベルの
思考回路を把握している。
「ローラ——」
「ベル姉さんっ!」
 突然大声で昔のあだ名を呼ばれ、シスター・ベル説教
としようの口がピタリと止まった。

「このオレを育って、ありがとうございました」

 少年の顔はいつもの悪ふざけな笑顔の変わりに、
見たことはない優しいと共に切ないな微笑みだっだ。
シスター・ベルが気付いた時、少年はもう消えた。

「ふぅ…」
ローランは山道のフェンスの前で立ち止った。
フェンスを越えると魔物があるを知るの恐怖、
フェンスを越えれば答えがあるを知るの希望、
少年の体が震えていた。
少年の荷物は割りと簡単です、バックパックに
衣服と水筒、財布と寝袋、そして手にある
小さなロケット。
ローランはロケットを持ち上げて、ピシとカバーを
開けた。中には戦術オーブメントみたいたった一つの
スロットがあった。
「よっし!行くかっ!」
まるでローランに応じるのように、
ロケット(オーブメント)は輝いていた。
現在、七耀暦1202年、もう一つ物語の始り——

■クロイ

【タイトル】 クローゼとクローディア
【作者】 黒井隆二

 時は「リベールの異変」から三ヶ月、場所は
王都グランセルにあるグランセル城、時間は朝六時、
クローゼ・リンツの目覚め時間である。ベッドを整えて
髪から始り歯磨きに終わりの日課を終わると、
ノックと共に、
「クローゼ様、おはようございます」
 微笑みながら使用人であり友達でありの
メイドに挨拶した。
「おはようございます、シア」
「あ〜使用人の仕事奪わないでください」
 シアが言ってるのは整えたのベッドのことでしょう、
と思ったクローゼは苦笑ながら着替えをはじめた。
「慣れたものですから、ごめんなさいね」
「はいはいそうですか、こんな事女官長に
知られたら叱れるのはあたしけどねー」
 しばらく談笑した二人はクローゼの着替え
終わったあと、クローゼの一言と共に、
「今日の予定はなに?」
 クローディア・フォン・アウスレーゼ
の目覚めであった。

「伯母様とユリアはいない?」
「ええ、今日はツァイスの展示会の開催式で、
さっき親衛隊と一緒にアルセイユ号で
出発しました」
「そうですか…あれ?つまり——?」
「はい、クローディア様は女王代理です」
「へっ?」
クローディアはまったく状況を把握していないの
ような表情であった。
「…もしかして忘れてたの、姫?」
「忘れても何も、こんな事初めて聞いたよっ!?」
「本当ですか?アリシア様はもう伝え済みと
言いましたけど?」
少し記憶を探したあと、姫が深刻な事を
覚えたように顔が真っ白になった。
昨日は政治の授業の日であて、ユリアと
剣術の日もあり、さらに外国の大使の晩餐会があった。
疲れ果ての彼女は部屋に帰るとすぐに着替えて
ベッドに倒れた。そして曖昧な記憶で、
誰かが部屋に入ってなに訳分からない
の事を言ってあと出ていた。
「そんな…無茶すぎます伯母様」
「大丈夫ですよ姫様、みんなはサポートしますから!」
とほほ、と言いくらいのクローディアは
一国のリーダーとして、大広間へ歩き出した。

 導力は、私達が住んでいる世界を動くエネルギーの名。
そしてこの力(エネルギー)を操るため、
エプスタイン博士50年前に発明した機械、導力器。
これは私達住んでいる世界の基盤であり、
これは私達が住んでいる世界の基準であり、
これは私達の世界である。
導力は、蒸気より能率的な動力を提供する、
火より安定的なエネルギーを出す、
人より倍的な処理能力を持つ。
新たな発明を産み出す、新たな可能性を照らす。
導力を極めた国家こそ、世界の最前線にある。
導力は、武器であり。遊撃士(ブレイサー)や軍人は
「戦術オーブメント」という導力器。時には
人を守る為に、魔物に向かう。当然———
———欲望を叶う為に、人に向かうこともある。
これは私「クローゼ」として経験した出来事。
今の私、「クローディア」はこれを改善するため
動けている。
誰にも幸せに暮す世界を作るため、闘争を止めたい。
誰にも哀しい事を済ませるの世界、見つけたい。


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