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魔刻 -THE VIVIOUS HOUR- 「もっ、者ども、出合え! 出合えいっ!!」 得物を手にした男達が、ばらばらと部屋に雪崩れ込んできた。 真っ先に飛び込んできた男が、青白い炎に包まれた黒い影を認めると、怒声を上げた。 「何奴! ここをダミドフ様の館と知っての狼藉かっ」 黒い影は再びゆらめくと、ゆっくりと歩み出た。 「そんな名前は知らないわ。私が追ってきたのはこの輝晶石。貴方、知ってるかしら。輝晶石にはね、計り知れない魔力があるの」 炎に照らされて、緩やかな体の線があらわになる。短く切った黒い髪。艶のある紫の唇。切れ長の目。その瞳の奥に燃える、青白き炎。 「お、お前は・・・・妖炎のメルメラーダ!!」 誰ともなく、声が上がる。黒い影は口の端を上げた。 「こんな片田舎でも、私のことが知られているとは、光栄ね」 一人の男が、剣を構え直した。 「ふ、ふざけるなっ」 構えた剣を前に、男はメルメラーダに向かって突進した。しかし、切っ先はメルメラーダを通り抜け、空に弧を描いた。思い切り剣を振ったため、男は勢い余って不格好に倒れ込んでしまった。 「どうしたの、それで終わり? じゃあ、今度は私の方から行かせてもらうわ」 メルメラーダは掴んでいた木箱から輝晶石を取り出すと、それを頭上に掲げた。 −輝きの石よ。我の命に従い、輝きの流れを一つとし、真の姿を呼び覚ますべし− 呪文が終わると石はまばゆい光を発した。光はまるで生き物のようにうねうねと動きだし、やがて青白い大蛇となった。 「ふふ。輝晶石は単なる宝石ではないわ。こうやって使われるためにあるの」 光から生じた大蛇は、次々と男たちを襲って行った。 |
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