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■Mt.RYOYA

【タイトル】 酒は飲んでも飲まれるな
【作者】 Mt.RYOYA

 陽気の中、不機嫌な男がいた。その名をミュラー。
そして彼に引きずられている気絶した
金髪の青年、オリビエだ。
なぜ2人がこうなっているか。
やはりオリビエのせいだ。この皇子が何をしたのか…?

——事の発端は昨日。2人は仕事の為に
帝国大使館に来たのだが、飛行船の中で
オリビエは面白そうな話を聞いた。
"居酒屋サニーベル・インで飲み比べをするらしい"
これを聞いて彼が行かない方が変だ。
大使館をすぐに抜け出して居酒屋へ向かった。
まだ夕方なのに結構な人集りがあった。そして

「この僕を引き立てるには丁度良い人数だね。
僕の勇姿を皆に見せてあげようじゃないか」

と、既に自分に酔ったオリビエが店に入ろうとした時、
彼の体が凍り付いた。

「アレ?ナゼ体が動かナいんだろウ?」

その瞬間、彼の前に天使のように
微笑んだ悪魔が出現した。

「あらぁ〜オリビエじゃない(ハート)」

完全に出来上がったシェラザードだ。
奥の方を見ると男が大勢潰れている。
オリビエは全力で回れ右した。しかし時既に遅し。

「逃がさないわよ〜(ハート)」

笑ってはいるが既にオリビエの襟首を掴んでいて、
そのまま彼は店の奥へ連れて行かれた。

「だ、誰かお助けぇ〜…」

空しい叫びが響いた。
オリビエが地獄に落ちた頃
ミュラーはオリビエの脱走に気付いた。

「あの阿保皇子め…」

 ミュラーは放浪皇子が行きそうな居酒屋へ向かった。
店に入ると気絶寸前のオリビエがシェラザードに
頭の上からワインを注がれていた。

「もう…ヤべて、死んじゃう…ああ、
ミュラーの幻が見える…ミュラー、今逝くからね」

オリビエが遠い眼をして言った。

「悪いがお断りだ」

ミュラーが凄く嫌な顔をして言った。
するとオリビエは元気になって叫んだ。

「そこにいるのは本物のミュラーなのかい!?
さすがは僕の親友!さあ助けてくれたまえ!!」

「まったく…」

ミュラーはオリビエを介抱しだした。その時、

「誰が帰っていいっつったぁ〜!?」

と泥酔した遊撃士がオリビエの口に
ウォッカをぶち込んだ。

「タスケテ…」

オリビエはダウンした。

「おい!しっかりしろ!!」

焦るミュラーに悪魔が近付いた。

「次はアンタの番よ(ハート)」

「い、いや自分は職務中で…」

「うっさ〜い!!」

そしてミュラーもオリビエと同じ結末を迎えたのだ。
これが事の顛末だ。ミュラーが不機嫌なのは
オリビエへのストレス+二日酔いのせいだったのだ。——

 しばらく引きずられていた
オリビエはやっと目を覚ました。

「う〜ん…ここは?」

「やっと起きたか。さっさと自分で歩け」

ミュラーの言葉を完全にスルーするオリビエ。

「頭がイタい…ミュラーおぶって(ハート)」

「ふざけたことをぬかしていると居酒屋へぶち込むぞ」

オリビエには分かった。ミュラーはマジだ。

「ゴメンナサイ。ちゃんと歩きます」

「初めからそうしろ、阿保が」

 しばらくの沈黙の後、オリビエは言った。

「ねえ」

「なんだ」

「ありがとう、親友」

ミュラーは何も返さなかったが
少しだけ口元が綻んでいた。


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