英雄伝説 閃の軌跡IV - THE END OF SAGA -

SEN NO KISEKI ダイジェスト 閃の軌跡III

警告 WARNING

このコンテンツには「英雄伝説 閃の軌跡III」に関する重大なネタバレが含まれています。

終章「誰がために鐘は響く」

──事件の翌日。
曇天どんてんに覆われた帝都では号外が配られ、人々はラジオの続報に耳を澄ましていた。

分校は演習地での待機が命じられたが、アルティナだけは情報局の緊急招集で皆と離れていた。

アッシュの為に情報を手に入れると、頼もしく請け負った彼女を想い、リィン達は気持ちを奮い起こす。

やがて発表された、帝国政府からの重大声明。

オズボーン宰相は、工作員の投入から今回の凶行をカルバード共和国の“宣戦布告”と明言。

全国民の“総力”を結集する新法──『国家総動員法』を成立させる事を宣言するのだった。

アッシュは都合よく現れた“駒”か、あるいは用意された“にえ”だったのか。

どちらにせよ、想像を絶する仕掛けが進んでいる事は明らかだった。


今一度《VII組》で集まる為、エマとセリーヌが霊脈を使い転位術を発動。

リィン達は演習地を抜け出し、転位した先の《ヒンメル霊園》で旧VII組全員と合流した。

エマとガイウスに提案され赴いたのは、帝都のヘイムダル大聖堂。

そこで待っていたトマスは、教会が極秘裏に保有する星杯騎士団、その副長である身分を皆に明かす。

──そしてガイウスも、守護騎士ドミニオンの1人として第八位を継いでいた事を明かすのだった。

《緋色の魔女》ローゼリアも姿を見せ、彼女とトマスは、1200年前の帝国の神話を語り始める。

《焔》と《大地》の2つの至宝。それぞれを授かった人間同士が争い、至宝の“力”が最後の激突で融合した。

そこから生み出された、《巨イナル一》と呼ばれる“鋼”。

自分達の手に負えないと判断した“焔”と“大地”の眷属達は、《巨イナル一》を封じる事にした。

“大地”の眷属が7つの器を用意し、“焔”の眷属が力を分割して宿す事で作り出された“彼ら”。

それが7体の騎士人形──《騎神》デウス=エクセリオンだった。

その後、“焔”の眷属は《魔女》、“大地”の眷属は《地精》と名を変え、帝国の行く末を共に見守っていた。

……900年前、暗黒竜の災厄で“聖獣”を喪った《地精》が、《魔女》との交流を断つまでは。


《黒の工房》となった彼らは、悲願である《巨イナル黄昏》なるものを導こうとしている。

それはクロチルダが言っていた“終わりの御伽噺”であり、帝国の現状はその兆しであると。

すべての真実を知る者は2人。オズボーン宰相、そして工房の主──《黒のアルベリヒ》のみだった。

異常な事態に困惑する一同の前へクロチルダが現れ、皮肉っぽく告げる。

結社は《巨イナル黄昏》に協力し、世界の終焉の中で『幻焔計画』を完遂する事に決めたと。

すると遠くから鐘の音が響き、リィン達はクロチルダが展開したある映像を目にする。

地下から放出される“黒い瘴気”が《カレル離宮》を漆黒の大伽藍、《黒キ星杯》へと変貌させた。

それを眺める集団の中には、気を失っているアルティナ、行方知らずだったジョルジュ──

そして、白髪に紅い瞳をした男、《黒のアルベリヒ》の姿が。

彼こそ、10年前に事故死したはずの『フランツ・ラインフォルト』だった。

鐘の音に誘われるように、帝都中に幻獣や魔煌兵が出現。

協力者の力も借りて撃退し、新旧VII組は《黒キ星杯》を目指す。

星杯前に到着したリィン達のもとへデアフリンガー号が滑りこみ、分校の生徒・教官陣が降り立った。

立ち塞がる《鉄機隊》や2つの猟兵団。《銅のゲオルグ》を名乗るジョルジュも、攻撃態勢をとった。

互いの術を組み合わせ、星杯の障壁に隙間をこじ開けるトマスとローゼリア。

その間にエマが転位術を発動。新旧VII組は光に包まれ、星杯内に吸いこまれていく。

着いたのは星杯の最上層。待ち受ける“彼ら”との戦いを覚悟し、リィン達はその先へ進んで行く。

結社の使徒に執行者、“地精”の協力者や《鉄血の子供達アイアンブリード》。

リィンと新VII組を前に進ませる為、次々に足止めに残る旧VII組の仲間達。

その想いを繋ぎ、ついに最下層へ到達するのだった。

妖しく変異した広間の真ん中には、眠りについている禍々しい《黒の聖獣》。

《黄昏》の意図を問われたアルベリヒは、落ち着き払って答えた。

帝国にかけられた《巨イナル一》の呪い。人や社会そのものに、“黒い種”を植えつけるような“何か”。

むしろその呪いを利用し、7つに分割された《巨イナル一》を進化した1つの“鋼”に戻す。

そうする事で、世界を闘争の原理で染め上げ、人を遥かな高みへと導く、と。

災厄でけがれた聖獣を《剣》で屠る事で、《巨イナル一》を真に完成させる《黄昏》が始まる。

その《剣》に必要なのが、戦術殻と完全同期した、人にして武具でもある存在──

自らの命と引き換えに《終末の剣》へ昇華できる素体。その最終型がアルティナだった。

目覚めた聖獣はやがて覚醒し、全身に真紅の眼を現すと憤怒の咆哮ほうこうを上げた。

騎神と機甲兵を呼び寄せ、死力を尽くすリィン達。

ところが一瞬気を緩めた隙に、聖獣が放つ衝撃波に生徒達の機体が吹き飛ばされてしまう。

持ちこたえたリィンが太刀を振るうも、巨大な顎が太刀を捉え、噛み砕こうとする。

リィンをさらに追いこむように、1つの映像が映し出された。

オリヴァルト皇子にアルゼイド子爵、遊撃士トヴァルを乗せ星杯前に駆けつけた《カレイジャス》。

突如紅き機体は爆発音に包まれ、その翼諸共、空中で爆散するのだった。

直後、太刀を砕き呑んだ聖獣が、騎神本体に牙を立てる。

“核”の内部は赤く明滅し、リィンの絶叫が響いた。


その時、意識の戻ったアルティナがクラウ=ソラスに飛び乗り聖獣に一撃を与える。

しかし大したダメージは無く、リィンの前でバリアを張る彼女に聖獣は腕を振りかぶった。

次の瞬間、全速力で降下しその間に割って入ったミリアム。

周囲の制止も構わず、リィンやアルティナを庇うようにアガートラムでバリアを張る。

『みんな、守ってみせる!!』

そう言い切る彼女に、猛り狂った聖獣が再び腕を振り上げた。

永遠とも言える刹那せつなが過ぎ去り──

上体を起こしたヴァリマールが、引き裂かれたミリアムとアガートラムを両手で受け止めた。

眩い光に包まれた彼女はどこか満足そうな笑みを浮かべ、溶け合うように次第に形を変えていく。


……《根源たる虚無の剣》。巨大な白銀の剣が、そこにあった。

噴怨と慟哭の咆哮を上げ、鬼化するリィン。禍々しい気は騎神自体をも変貌させ、襲いくる聖獣の腕を《剣》で斬り落とした。

己を呑みこんだ力のままに斬撃を与え続け、止めを刺そうと剣を胸の中心に突き立てたその時──

聖獣の断末魔と共に解放された“黒い波動”が、星杯内部から外へ、帝都から各地へと広がっていった。

──リィンが暴走を続ける最中、ジークフリードの仮面が独りでに外れ素顔が露わになった。

《蒼の騎神》に飛び乗る“クロウ”に続き、猟兵王ルトガーとアリアンロードも、各々の騎神に乗りこみ最下層へ降り立つ。

蒼、紫、銀の騎神がヴァリマールを囲んで、白銀の剣をその手から弾き飛ばした。

セドリック皇太子も《緋の騎神》に乗りこみ、最後にオズボーンが《黒の騎神》を召喚する。

漆黒の騎神は、ヴァリマールの首元を掴み言い放った。


『──それでは始めるとしよう、リィン。』

『世界を絶望で染め上げる、くら終末の御伽噺を。』